日韓WTO協議、初回は平行線 次回開催には合意
【ジュネーブ=細川倫太郎】日本と韓国は11日、日本による半導体材料の対韓輸出の厳格化を巡って、世界貿易機関(WTO)本部で初回の協議を開催した。日韓はそれぞれ従来の主張を繰り返し、議論は平行線をたどった。韓国は次回協議の開催を要請し、日本は受け入れた。ただ、解決の糸口は見通せず、日韓の通商紛争はWTOの第1審での審理に移る公算が大きい。
日本からは経済産業省の黒田淳一郎・通商機構部長ら、韓国からは産業通商資源省の丁海官(チョン・ヘグァン)新通商秩序協力官らが出席し、協議は非公開で行われた。韓国は日本を9月11日に提訴し、WTOでは提訴後60日間はまず当事国同士が解決に向け協議する決まりになっている。
協議で日本は韓国の輸出管理体制の脆弱さに懸念を抱いているとし、実際に不適切な事案があったと伝えた。大量破壊兵器の不拡散などの観点から個別許可申請に基づく管理に変更しただけで、この措置は「WTO協定違反には全くあたらない」と主張した。韓国の政治的な動機からWTOに議論を持ち込んだのは「不適切だ」とも述べた。
韓国側も従来の主張を繰り返した。輸出規制の厳格化について「具体的根拠がなく、韓国だけを対象にした恣意的で差別的な措置だ」と指摘。「WTOが規定する複数の協定に違反している」とし、直ちに規制を撤回することを要求した。
協議後、黒田氏は記者団に「韓国の質問に対し丁寧に説明した」と話したが、双方の意見の隔たりは大きい。日本は2回目の協議にも応じる構えだが、歩み寄るのは極めて厳しい状況だ。再協議の日程は決まっていない。
2国間協議で解決しなければ、韓国は11月中旬にもWTOに第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)の設置を要求する可能性があり、争いの判断は第三者に委ねられる。パネルが出した判決に不服がある場合は上訴することができ、最終審にあたる上級委員会での審理が始まる。近年、WTOで審理される貿易紛争案件が増えており、結論が出るまでには時間がかかりそうだ。
日本は7月に韓国向けの半導体材料などの輸出管理を厳しくする措置を導入した。半導体やディスプレーの材料となるレジストなど3品目で、個別契約ごとに許可を取るように求めた。