「投資でより良い社会」レオス藤野氏(投信観測所)
「老後2000万円問題」などをきっかけに、若い世代でも資産形成への関心が高まっている。投資をする意味やお金との付き合い方などについて、「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長に聞いた。
若いうちは「自己投資」を
――投資との向き合い方は。
「投資とはお金でお金を増やすことではなく、『エネルギーを使って未来からお返しをもらうこと』だと思っている。ここでいうエネルギーとは時間や情熱、知恵なども含み、未来に向けてこれらを注ぎこむことこそが投資だ。一般的に言われているお金を使った投資は、本来の投資のごく一部でしかない」
「投資の最大の目的は、より良い社会をつくること。投資には『自己投資』と『他己投資』の2種類がある。運用会社の経営者としてふさわしくない発言かもしれないが、若い人には『20代のうちはお金をためなくていい』とアドバイスしたい。それよりも大切なのは、人脈づくりや自分のスキル向上などに時間とお金を費やす自己投資だ。そうすることで多くの出会いに恵まれ、結果的に豊かで充実した暮らしにつながる」
「株式投資は他己投資のひとつ。自分が応援したいと思える会社を選び、その会社への投資を通じて世の中をより良くしていくところに意義がある。人を育てるための教育投資や、慈善事業などへの寄付も社会に役立つ重要な他己投資だ。どれも社会を良くする原動力になる」
「激変」の時代に
――これから日本の社会はどんな風に変わっていきますか。
「いまの日本は激変時代のとば口に立っている。ここからは挑戦する人としない人との間に、新しい格差が広がっていくだろう。どちら側にいるかで天国と地獄ほどに風景が違ってくるはずだ。どこかの会社や組織に所属して、満員電車に揺られて毎日出社し、上司の顔色をうかがいながら年功序列の昇給昇進を待つことに価値を置いた古い概念は崩壊していく。歴史のある大企業でも時代の変化に立ち向かって挑戦し続けないと駆逐されてしまう」
「代わりに新しい働き方、生き方をサポートするためのビジネスや技術が日本でこれからどんどん増えてくると思う。例えば次世代通信規格『5G』などの普及で働き方はガラッと変わり、パソコンひとつあれば世界中どこにいても仕事ができる時代になる。無駄な仕事、無駄な会議、無駄な移動を減らし、人生を楽しもう、家族を大切にしよう、自然を守ろうといった考えが広がり、もっとシンプルで生きやすい社会になると思っている」
若い起業家に期待
――変化はすでに起きていますか。
「自分が生きているうちは無理かなと半ばあきらめていたが、思ったより早く変わり始めた。いまの日本は2000年前後の米国と似ている。そのころ起業した米アマゾン・ドット・コムやグーグル、フェイスブックなどは、今や世界の時価総額上位に名を連ねる。彼らがここまで大きく成長したのは、そこに最高の人材がいたから。日本でも最近は超優秀な学生が大企業や官公庁への就職を選ばず、自分で起業したり、やりたいことを実現するためにスタートアップ企業を選んだりしている」
「すでにスポーツ界などでは世界と互角に戦う若者の活躍が目立つ。ビジネスの現場も例外ではない。彼らと同世代の有望で面白い人材が頭角を現し始めた。若くて柔軟な頭脳を惜しまず使い、社会課題を解決していくための新しいビジネスをどんどん生み出している」
――価値観や発想が変わってきているのでしょうか。
「毎日のように若い起業家と会う機会があるが、彼らはこれまでの経営者とは全く違う。お金や高級車などを手に入れたいわけではなく、仲間と一緒に社会課題をクリアしていくことがゲーム感覚で面白いと感じるようだ。バブル経済の崩壊や就職氷河期などを経験した世代と違って、生まれながらにしてポジティブ思考を持っている。閉塞感を打ち破る力がある彼らをみんなでサポートしていければ、日本の未来はとても明るい」
(QUICK資産運用研究所 望月瑞希)