セブン、低収益店に月20万円支援、24時間営業維持へ
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は10日、傘下のセブン―イレブン・ジャパンでフランチャイズチェーン(FC)加盟店への利益配分を見直すと発表した。FC契約を見直し低収益の加盟店約7千店には月額20万円を実質的に支給するなど支援を手厚くする。24時間営業というビジネスモデルの持続が危ぶまれる中、本部が加盟店に譲歩する形で利益配分のあり方が変わることになる。
セブンFC加盟店は、売上高から商品原価を差し引いた粗利益の一定の割合をロイヤルティー(経営指導料)として本部に支払っている。これまでの24時間営業店舗ではロイヤルティーの割合を2%引き下げるなど加盟店に対して利益配分の優遇策は一律だった。
2020年3月から適用する新たな利益配分の優遇策では24時間営業で粗利益額が月に550万円以下の低収益店の場合には、ロイヤルティーを20万円減額する。対象店舗は全FC加盟店2万店のうち約7千店という。24時間営業のための人件費を確保するのに苦しんでいる加盟店への配慮がにじむ。
粗利益が550万円を超える高収益店では従来の利益配分の優遇に加えて月額3万5千円を減額するなど、24時間営業を継続する高収益店のオーナーにも支援を手厚くする内容だ。
井阪隆一社長は「どのケースでも利益は現状より改善する。売り上げが低い店により傾斜をかける仕組みとしている」と説明した。1店当たりの採算は年間平均約50万円改善する見込みだ。
セブンが利益配分の見直しに動く背景にはコンビニの24時間営業問題がある。今年2月に大阪府東大阪市のセブン加盟店オーナーが営業時間の短縮を強行し、問題が表面化していた。人手不足の深刻化で人件費が高騰し24時間営業の持続が加盟店の収益を圧迫する場合も増えた。こうした現状に、経済産業省がコンビニ大手各社に対策を求めるなど社会問題化していた。
セブンは商品の配送など24時間営業を前提としたビジネスモデルを原則として維持したい考えだった。だが、加盟店オーナーを対象に7月に実施したアンケートでは15%が「非24時間営業を検討」と回答。加盟店をつなぎとめるためにも、利益配分の見直しを決断せざるを得なかった。
ロイヤルティーの見直しにより、本部利益は年間約100億円減る見通しだ。収益を補うため、店舗閉鎖や立地移転など進める。通常は年間に数百店を閉店しているが、20年度までに不採算店を中心に約1000店を閉店するなど店舗の整理を加速する。本部人員の削減も進める。
セブンは24時間営業の継続が揺らぐ中で、一定の本部利益を加盟店に配分することで、持続可能なコンビニモデルを模索したい考えだ。ただ、7月に発覚したスマートフォン決済サービス「セブンペイ」の不正利用事件などもあり、今年3~8月の既存店売上高は前年同期比0.6%減と、大手3社の中で唯一の前年割れとなった。セブン&アイの屋台骨の国内コンビニ事業で、加盟店オーナーの本部への信頼回復の道のりは険しい。