米民主ウォーレン氏首位、「格差是正」支持広がり
大統領候補争い、バイデン氏抜く
【ワシントン=永沢毅】2020年米大統領選の民主党候補の指名争いで、左派のウォーレン上院議員(70)の支持率(各種世論調査の平均)がバイデン前副大統領(76)を抜いて初めて首位に立った。格差是正を訴える政策への共感が穏健派にも広がりつつあり、ライバルの失速も追い風となった。大統領選の予備選が始まる来年2月までは4カ月あり、混戦のなかで勢いをどこまで維持できるかが焦点となる。
米政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクスが8日まとめた調査によると、ウォーレン氏の支持率は26.6%とバイデン氏の26.4%をわずかに上回った。選挙戦開始当初、ウォーレン氏の支持率は5%にも満たない水準で、出馬表明前のバイデン氏に20ポイント近く水をあけられていた。
民主党のなかで左派の代表格の一人であるウォーレン氏はリベラル色の強い政策が売り物で、格差是正に経済政策の力点を置いている。その目玉は富裕層への増税だ。所得が最上位の約7万5000世帯を対象に5000万ドル超の純資産に1ドルあたり年2%、10億ドル超の部分は1ドルあたり年3%をそれぞれ課税するのが柱だ。
「親ビジネス」の立場をとるトランプ大統領が導入した大企業への減税も見直し、これらによって確保した財源を国民皆保険や大学無償化にあてる。ウォーレン氏の浮上は、こうした政策への理解が支持者の間で広がりをみせていることをうかがわせている。
キニピアック大の調査によると、穏健派の民主支持者のウォーレン氏の支持率は7月の9%から直近は21%に拡大した。バイデン氏は39%から31%に下がっており、ウォーレン氏支持の裾野の広がりが鮮明だ。
「民主社会主義者」を自称する世論調査3位で同じ左派のサンダース上院議員(78)と比べ、「私は骨の髄まで資本主義者」と主張するウォーレン氏なら穏健派も受け入れやすい側面がある。
ライバル候補の失速も有利に働いている。長らく首位を維持していたバイデン氏は、息子のウクライナや中国でのビジネスに関する疑惑が再燃した。トランプ氏がこの問題を調べるようウクライナに圧力をかけた疑惑をめぐって民主が弾劾調査を9月下旬から正式に開始した。反発したトランプ氏がバイデン氏の問題を繰り返し攻撃し、逆風となっている。
サンダース氏は1日に動脈閉塞による健康不安が明らかになり、選挙戦をいったん休止した。その後復帰したものの、活動量はセーブする方針で支持拡大の足かせになるのが必至だ。
首位に立ったウォーレン氏への風当たりは強くなりそうだ。保守系メディアは今月、妊娠によって公立学校の教職を追われたとする同氏の発言を取り上げ、過去の説明との整合性を問う報道を展開している。大統領選は政策だけでなく人格やスキャンダルへの対応も問われる。バイデン氏も巻き返しに動くとみられ、ウォーレン氏の人気が今後も持続するかは不透明だ。