アマゾン、日本でも模造品対策 任天堂など25社と連携
アマゾンジャパン(東京・目黒)は9日、日本で新たな模造品対策を始めたと発表した。任天堂やパナソニックなど25社と製品情報を共有し、人工知能(AI)などで模造品を自動的にはじく精度を上げる。メーカーなどが直接、アマゾンのサイト上の模造品を削除する機能も提供する。今年から欧米で先行導入した仕組みを日本でも始めるが、出品者の厳格なチェックなど課題は残る。
米国で2019年2月から、独仏英など欧州5カ国で8月から導入した模造品対策「プロジェクトゼロ」を日本にも導入した。メーカーなどと製品やロゴの情報を共有し、AIの画像認識などで模造品の疑いがある商品をはじく精度を上げる。メーカーなどがサイト上で偽ブランド品を発見した場合、直接削除できるようにもする。
日本ではまずパナソニックや任天堂、アイリスオーヤマなど25社と連携した。20年前半にはメーカーなどブランドの権利者が商品1つずつに独自のコードを発行し、アマゾンが出荷前にコードをスキャンして、正規品かどうかチェックする仕組みも導入する計画だ。
欧米では既に6000超のブランドがアマゾンの「プロジェクトゼロ」に参加し、9000万点の模造品の疑いのある出品を閲覧前に止めたという。参加するメーカーなどは現在、アマゾンが招待する仕組みだが、将来は一定条件を満たした上で、幅広く参加できるように変える方針だ。
米アマゾン・ドット・コムは18年に世界で400億円以上を投じ、AIや調査員による検出で、模造品対策を進めてきた。日本でも同様に模造品がないかどうかをチェックしてきた。ただ世界中で50億件を超える出品情報があり従来の取り組みだけでは不十分だった。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が17年に非公式に実施したアマゾンの出品状況の調査で、疑わしい商品のうち、約100点を購入して調べると、約4割が模造品だったという。海外からの出品もあり「出品者の審査、確認が甘くもっと厳格にすべきだ」(模造品販売の監視団体)という指摘もあった。アマゾンは日本でもメーカーなどと連携、模造品の販売を防ぐ。
日本の電子商取引(EC)各社も対策を強化している。楽天はスタッフによる監視に力を入れ、消費者の通報を受け付けている。模造品と疑われる商品があれば楽天が購入し、提携する1100以上のメーカーなどと連携し、本物か偽物かを判定して出品を防ぐ。1月には衣料品や服飾雑貨の性能を評価する専門機関、ボーケン品質評価機構(大阪市)と組み、調査目的で購入した商品の繊維がサイト記載の商品説明と同じかどうかを鑑定する仕組みも導入した。
ヤフーはフリマアプリ「PayPay(ペイペイ)フリマ」で、AIを活用した模造品検知の仕組みの導入を検討している。メルカリもメーカーなどと連携し、偽ブランド品の情報を収集して出品状況をチェックしている。出品者が商品画像を登録するとAIが認識してブランドや品目などを自動で入力する機能がある。偽物の可能性がある場合、手続きを一時停止し、カスタマーセンターから出品者に連絡する。
各社は偽ブランド品の購入者に対し、補償制度を整えているが、消費者保護の観点から、サイトへの出品を防ぐ取り組みの徹底が求められている。楽天やヤフーなどで構成するインターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)の18年の調査では、大手サイトの権利侵害品の削除比率は出品総数の約2%だった。ECを運営するプラットフォーマーの社会的責任が増すなか、さらなる模造品対策を求められる。(工藤正晃)