呪縛解く久々のゴール 新天地ウエスカで
「これで呪縛が解ける」
9月28日の対ジローナ戦。DFを背負ってトラップし倒れ込みながら右足で放ったボレーが43分にゴールネットを揺らした瞬間、そんなふうに思った。2017年12月13日以来のゴールは想像以上に重く、感慨深いものだった。
17年シーズンは開幕2戦連発で始まり、前半戦だけで6ゴールした。しかし、後半戦は負傷離脱。ワールドカップ(W杯)ロシア大会も18年シーズンも出場機会はわずかでゴールなく終わった。
心機一転、19年7月30日にスペイン2部リーグのマラガに移籍した。が、8月中旬にリーグが開幕しても僕の選手登録は完了しなかった。リーグが定める選手年俸総額をマラガが超えていたからだ。
「大丈夫」というクラブの幹部の言葉を信じたが、結局事態は好転しなかった。9月3日契約解除が成立、5日に同じ2部のウエスカと契約できた。カタールに住むオーナーのサインが入った契約解除の書類到着があと数分遅ければ、移籍はかなわなかったかもしれない。いつも「いろいろな経験をしたい」と話しているけれど、本当に今回は「瀬戸際」を見た思いだ。
9月8日に途中出場でデビューし、先発3試合目でゴール。「このまま点が取れなかったら、FWとしての僕はどうなる?」という思いもあったから安堵感は大きい。
ウエスカは人口5万人の小さな町のクラブ。昨季は1部で戦ったが、2部以下が常連だ。同僚はほとんどスペイン人で英語を話せる人間は少ない。コミュニケーションは雰囲気重視になるが、僕はそういう感じのほうがリラックスできるタイプなので不自由は感じてはいない。
「前線からプレスをかけ続けて裏を狙うなど、ダイナミックな動きをしてほしい」
監督が求めるFW像は、僕自身の望みと合致する。マラガ同様にウエスカも、いわゆる"うまい"選手が多い。そういうチーム内で、僕が違いを示せるのは、そういうプレーだと思っている。
しかしパスを短くつないできれいに崩そうとするチームメートから、僕を生かす縦パスが出てこない試合もある。以前ならパスを引き出すために中盤に下がる選択をチームのためにしたが、今は前線に残り、相手の嫌なところへ顔を出す動きを繰り返し、脅威を与えるようにしている。このポジションで、このスタイルで勝負するという決意は揺るがない。スペインサッカーでは異質かもしれないが、自分を疑うことはない。
そういうプレーをするからこそゴールが取れないと、ましてや負けると、結果を引きずってしまう。昇格を目指すクラブには勝利が義務づけられている。葛藤はあるが、これもまた試合に出ているからこそ、味わえる充実感のひとつだ。
(ウエスカ所属)