NBAの「二枚舌」に批判 香港デモ巡る声明、米中で相違
【ニューヨーク=野村優子】米プロバスケットボールの人気チーム「ヒューストン・ロケッツ」の幹部が香港の抗議デモを支持する内容をツイッターに投稿した問題を巡り、米プロバスケットボール協会(NBA)の対応が波紋を呼んでいる。中国企業との提携解消などビジネス面に影響が広がるなか、NBAは6日に英語と中国語で内容が異なる声明を発表。中国との関係を重視する姿勢に、米国内の政治家から批判が高まっている。
きっかけとなったのは、ロケッツのゼネラルマネジャー(GM)のダリル・モーリー氏が4日、ツイッターに「自由のために戦おう。香港と一緒に立ち上がろう」と投稿したこと。香港デモを支持する発言に中国では批判が高まり、ビジネスへの影響が拡大した。
これを受けてNBAは6日、「モーリー氏が表明した意見は、中国の友人やファンを怒らせたと認識している。NBAを代表した意見ではないと明らかにした一方、自分にとって重要なテーマについて意見を共有する行為は支持する」と英語でコメントを出した。
しかし、米メディアによると中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」で公表した中国語コメントはニュアンスが異なる。「モーリー氏の不適切な発言には非常に失望している。彼は間違いなく中国の友人やファンを傷つけた。NBAの価値観のもと、興味のあるテーマや意見を共有できる」と述べたという。
モーリー氏も問題となった投稿を削除し、「中国のファンやスポンサーを怒らせるつもりはなかった」と謝罪。しかし、NBAがモーリー氏の発言を「不適切」とし、中国に寄り添ったコメントを出したことに批判が集まっている。
共和党のテッド・クルーズ上院議員は「ロケッツファンとしてモーリー氏の発言を誇りに思った。多大な利益を追求するため、発言を撤回させるとはNBAは恥知らずだ」と批判。民主党のベト・オルーク前下院議員も「NBAが謝罪すべきことは、人権よりも利益を露骨に優先したことだ。なんと恥ずかしいことだ」と述べた。
前オバマ政権で住宅都市開発長官を務めたジュリアン・カストロ氏は、「中国は経済力を使い、アメリカ人による批判さえ封じている」と述べており、中国に対する批判も強まっている。