外需低迷 景気にブレーキ
動向指数、8月再び「悪化」
景気の不透明感が強まっている。8月の景気動向指数では、国内景気の基調判断が4カ月ぶりに「悪化」となった。外需の低迷で製造業が減速していることを示す指標が続き、消費増税のあった内需とともに不安がぬぐえない。専門家の間では戦後最長とされる景気回復局面は終わり、後退局面に入っているとの見方も出ている。
「市況が戻ると思ったら米国と中国の間で問題が起きる。中国企業は設備投資をするかどうか様子見をしている」。DMG森精機の現地法人、DMGMORI中国のフランク・ベアマン総裁はため息をつく。
米中の貿易摩擦が日本の景気に落とす影は色濃くなってきている。8月の景気動向指数は製造業の生産や出荷が鈍って下押し要因となった。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「国内景気は18年秋に景気の山を付けた後、輸出の減少ですでに後退局面入りしている」とみる。
今回の判断は8月までの景気指標に基づく。増税前の景気を映したものだが、足元では一段と厳しくなっている可能性がある。英調査会社IHSマークイットが発表するグローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)は、9月まで5カ月連続で景気判断の節目とされる50を下回っている。
景気動向指数で見ても、先行きは明るくない。数カ月先の景気を映すとされる先行指数は8月に前月比2.0ポイント低下の91.7となり、約10年ぶりの低水準だった。経団連の中西宏明会長は7日の記者会見で「先が読みにくく難しい局面だ」と述べた。
外需の不振に伴う生産の停滞は、堅調だった雇用にもじわりと波及している。8月の新規求人数は前年同月比6%近く減った。中でも製造業は15.9%減と落ち込みが大きく、減少も7カ月連続と陰りが目立つ。
消費税率が上がった10月以降は、これまで日本経済をけん引してきた個人消費が足踏みする懸念もある。キャッシュレス決済のポイント還元やプレミアム付き商品券など増税後の需要を下支えする施策があるものの、消費者心理は悪化が続き、消費の基調は強くない。
今後の焦点は外需の持ち直しだ。ある大手工作機械メーカーの幹部は「ほぼ全ての仕向け先で良くないが、半導体製造装置向けの受注は相当動き始めた」と語る。
内需をとりまく環境も今のところ底堅い。雇用は製造業の一部に陰りがあるものの、有効求人倍率は1970年代以来の高い水準にある。日経平均株価は2万1000円台にあり、市場の混乱が消費者心理を冷やすといった状況にはない。
今後、景気がしっかりした回復軌道を取り戻すには、米中貿易摩擦に伴う外需の停滞が持ち直し、消費増税後の内需が早期に回復するというシナリオが前提となる。ただ、いずれもまだ不透明な段階にあることは否めない。景気指数による「悪化」との判断が今年3~4月と同じように一時的なものにとどまるかどうかは、微妙な局面にある。
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