怖い物知らずの19歳、巨人・戸郷 CSで輝けるか
7年ぶりの日本一を目指すセ・リーグ覇者の巨人は10月9日からクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージに臨む。ベテランの阿部慎之助(40)が今季限りでの現役引退を表明。長年チームを支えてきた功労者の有終の美を飾るためにも、次代を担う若手の台頭も期待される。注目したいのはレギュラーシーズン最終盤に1軍デビューを果たした19歳のルーキー右腕、戸郷翔征(とごう・しょうせい)の投げっぷりだ。
宮崎・聖心ウルスラ学園高からドラフト6位で入団した戸郷は自ら「持っているのかな」と語るとおり、強運の持ち主だ。2軍での投球が評価され、先発ローテーションの谷間にプロ初登板で初先発した9月21日のDeNA戦(横浜)は、チームが5年ぶりリーグ優勝を決めた試合。中継ぎでプロ初勝利をマークした同27日のレギュラーシーズン本拠地最終戦(東京ドーム)は、阿部の引退を記念してチーム全員がユニホームの袖に「ありがとう慎之助」とのロゴの入ったワッペンをつけて臨んだ一戦だった。
ともに重圧や緊張で無駄な力みが生じてもおかしくない特別な舞台。それでも、物おじすることなく大胆に腕を振る「怖い物知らず」のマウンド度胸が光った。
優勝決定の大一番となった9月21日は、敵地で2位のDeNA相手に五回途中まで2失点と踏ん張った。「最初からエンジン全開でいった。打たれるかなと少し不安だったが緊張はそんなにせず、自分の投球ができた」。スリークオーター気味の腕の振りから、186センチの長身を生かして150キロ超の直球、カットボールなどを若者らしく思い切って投げ込んだ。
プロ初勝利を飾った27日は、阿部の同点ソロで本拠地が歓喜に包まれた直後の五回から、5番手で登板。いきなり1死満塁のピンチを招いたが、一塁に入っていた阿部からマウンドで「球はしっかり行っているから、自分の投球をしろ」と声をかけられ落ち着いた。後続を連続の空振り三振で切り抜けると、4回を2安打無失点、7奪三振の快投だった。
惜別の空気が漂う東京ドームに「少しプレッシャーを感じた」としながらも、その雰囲気を「楽しめた」という。抜け気味だった球も徐々に修正し「自分の投球を大きな試合でできたのはよかったし、そこが自分の強みだと思う。ファンの記憶に残る試合で投げられて、これからの野球人生の糧になる」と大きな手応えを得た。
シンデレラボーイには、遅れて来た「秘密兵器」としてCSでも出番が与えられそうだ。第2先発のような形でのロング救援のほか、先発候補の一人にも名前が挙がる。持ち前の強心臓ぶりを発揮して、ポストシーズンの大舞台でも輝きを放てるか。10代の若手がいきいきと躍動すれば、日本一奪回を狙うチームを勢いづける。
(常広文太)