ポスト羽生混沌 永瀬王座・木村王位…奪取続く将棋界
将棋界で「ポスト羽生」を巡る争いが混沌としている。1日に指された王座戦第3局を永瀬拓矢叡王(27)が制し、3連勝で新王座に。将棋界のタイトルは現在8つで、今年指された7タイトル戦のうち6つで挑戦者がタイトルを奪う異例の事態となった。全七冠(当時)を独占し、王座戦19連覇を果たした羽生善治九段(49)のような絶対王者が再び現れる日は来るのか。
昨夏には8タイトルを8人で分け合い、31年ぶりに複数冠保持者がいない状態となった。今春には豊島将之名人(29)が三冠となり"豊島時代"の到来を思わせたが、夏以降に棋聖、王位と相次いで失冠。名人の一冠に戻った。
日本将棋連盟常務理事の井上慶太九段は奪取の相次ぐ現状に「防衛の難しさと、(多数のタイトルを獲得した)羽生さんらの偉大さを改めて痛感している」と語る。
現在、複数冠を保持するのは渡辺明三冠(35、棋王・王将・棋聖)と永瀬二冠(王座・叡王)の2人。永瀬二冠はこの日の終局後、「さらに上を目指して頑張りたい」と三冠、四冠に向けた意欲をはっきり語った。
棋士の全盛期とされる20~30代以外の棋士も奮闘しているのが最近の特徴だ。「7度目の正直」で悲願の初タイトルを獲得した"中年の星"木村一基王位(46)、100期目のタイトルを目指す羽生九段はともに40代だ。
そして晴れ舞台への期待が高まるのが、17歳の藤井聡太七段だ。昨年は王座戦でベスト4に入り、現在進行中の王将戦でもわずか7人の挑戦者決定リーグ入り。藤井七段が初めてタイトルに挑むのはいつなのか、それを迎え撃つのは誰になるのか。
永瀬王座は、藤井七段とはたびたび練習将棋を指す間柄だ。今春に初タイトルとなる叡王を獲得して若手から目標とされる立場となった後も「危機感しかない」と明かしていた。永瀬王座は「今より強くならないといけないと思っている。藤井七段は年下だが、下とは思っていない。尊敬しています。負けないように、競争できるように頑張っていきたい」と語る。
タイトルホルダーが次々に入れ替わる昨今は、多士済々の棋士の活躍を見られる将棋ファンにとってたまらない状況とも言える。「永瀬王座の躍進が続くのか、藤井七段ら新しい人が出てくるのか。まだまだ楽しみは続きます」(井上九段)
(柏崎海一郎)