永瀬叡王が新王座に、3連勝で初の二冠 将棋王座戦
1日朝から神戸市のホテルオークラ神戸で指されていた第67期将棋王座戦(日本経済新聞社主催)五番勝負の第3局は午後9時6分、161手で先手の挑戦者、永瀬拓矢叡王(27)が斎藤慎太郎王座(26)を破り、3連勝で初の王座を獲得した。
将棋界には現在8つのタイトルがあり、叡王と併せて二冠の永瀬新王座は、渡辺明三冠(35、棋王・王将・棋聖)に続く複数冠保持者となった。永瀬新王座はタイトル2期獲得で、規定により同日付で八段に昇段。初防衛を目指していた斎藤前王座は無冠となった。
永瀬新王座は終局後、「ひとつ結果が出てよかった。さらに上を目指して頑張りたい」と喜びを語った。斎藤前王座は「(番勝負を通して)中終盤の精度で差を付けられた。何かを変えないといけない」と振り返った。
この日の将棋は第2局に続き、両者とも5時間の持ち時間を使い切る熱戦だった。
戦型は矢倉模様に。斎藤王座は後手番ながら素早く右銀を繰り出して先手陣に果敢に攻めかかったが、じっくり自陣を整備した挑戦者はたびたび自陣に駒を打ち付けて崩れない。機を見て反撃に転じ、最後は自玉の堅さを頼りに後手玉を着実に仕留めた。
解説の村山慈明七段は「王座の攻め、挑戦者の受けという展開が続いていたが、2二歩(85手目)のあたりで攻守が入れかわった印象だ。そうなるとやはり玉形の差が出る。王座に目立った疑問手はなかったように映ったが、最後まで自玉の堅さを残した永瀬叡王が安定感ある指し回しで逃げ切った」と評した。
永瀬新王座は横浜市出身。安恵照剛八段門下。2009年、四段に昇段しプロデビュー。16年棋聖戦、18年棋王戦で挑戦者となり、19年、叡王戦で初タイトルを獲得した。
〈指し手〉
▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀△6二銀▲2六歩△7四歩▲2五歩△3二金▲7八金△7三銀▲5六歩△4一玉▲5八金△6四銀▲6六歩△5四歩▲4八銀△8五歩▲6七金右△7五歩▲同歩△同銀▲6九玉△4二銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛△6四歩▲7六歩△8六歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛▲8七歩△8二飛▲5七銀△5二金▲7九玉△1四歩▲9六歩△9四歩▲1六歩△8五銀▲7五銀△7四歩▲8六銀△同銀▲同歩△6三金▲8七銀△7三桂▲3六歩△4四歩▲7七角△6五歩▲5九角△6六歩▲同銀△6五歩▲5七銀△4五歩▲7七角△6六銀▲同金△同歩▲同角△5五歩▲7七桂△7五歩▲同歩△6五歩▲5五角△同角▲同歩△3九角▲5八飛△4六歩▲同銀△7五角成▲2二歩△同金▲7六銀打△6四馬▲7四歩△同金▲7五歩△同金▲同銀△同馬▲7六歩△6六馬▲6七歩△3九馬▲7一角△9二飛▲5四歩△5七歩▲同銀△4九馬▲4八飛△同馬▲同銀△5二歩▲7四角△3二玉▲9二角成△同香▲8二飛△4一金▲9二飛成△4九飛▲5九金△2九飛成▲5三香△4三玉▲6二角成△5一銀打▲7三馬△5六桂▲8八玉△4八桂成▲同金△5九竜▲8三竜△6九銀▲7九金△3三金▲5一馬△同金▲5二香成△同玉▲5三歩成△同銀▲4五桂△4三金▲5三桂成△同竜▲同竜△同金▲4五桂△5九飛▲6八銀△7八歩▲5九銀△7九歩成▲5三桂成△同玉▲8三飛△6三香▲6五桂△4二玉▲6三飛成△7八金▲同銀△同と▲8七玉まで161手で永瀬叡王の勝ち
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16日午後6時30分から東京・大手町の日経本社2階「SPACE NIO」で永瀬拓矢新王座を迎えたイベント「新王座、熱闘を振り返る」を開催します。出演は他に豊川孝弘七段、飯野愛女流初段。入場無料。