熱いJ1終盤戦 風雲急の残留争い、上位も混戦
サッカージャーナリスト 大住良之
スポーツ界の話題は、日本代表が快進撃を見せるラグビーのワールドカップと、カタールのドーハで開催されている陸上競技の世界選手権に奪われた感じだが、いよいよ最後の2カ月、終盤戦にさしかかってきたJリーグも、負けずに熱い戦いが続いている。
Jリーグでは、来年のJ1(Jリーグ1部)全306試合でビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が使われることが9月24日の理事会で承認された。審判だけでなく、「黒子」ながら非常に専門的で重要な役割を担う映像オペレーターの訓練が間に合うのか、必要な映像を提供できるかなど、課題は山積だが、新しい時代が到来するのは間違いない。
■1試合平均「2万人超え」の可能性
今季のJ1では、「待望」と言っていい新記録が生まれそうだ。全34節中の27節、243試合終了時で1試合平均入場者数が2万773人。過去最多記録、1994年の1万9598人を大幅に上回っている。9月28、29の両日に行われた第27節も、浦和レッズ、FC東京、ガンバ大阪、名古屋グランパス、横浜F・マリノスという「入場者数ベスト5」のホームゲームがひとつもなかったにもかかわらず、平均1万7804人だった。
年間の平均が2万人を超えるには、残り7節、63試合で平均1万7019人以上が必要だが、今季のこれまでの状況や終盤での優勝争いや残留争いによる盛り上がりを考えれば達成される可能性が高い。「2万人超え」は、Jリーグの国際的地位を大きく上げるものだ。
さて残り7節、風雲急を告げてきたのが「残留争い」だ。J1では昨年から自動降格が下位2チーム(18位と17位)となり、3チーム目(16位)はJ2の3~6位で行われるプレーオフを勝ち抜いたチームとの「入れ替え戦」を行っている。「15位以内」を目指す戦いが、いま、とんでもないことになっている。
現在16位はサガン鳥栖(勝ち点28)。わずか3点(1勝)差の勝ち点31で、15位湘南ベルマーレと14位ガンバ大阪が並んでいるのだ。
鳥栖は今季をスペイン人のルイス・カレーラス監督の下でスタートしたが、9試合で1勝1分け7敗、得点わずか1と低迷し、5月には、昨年終盤にも指揮をとった金明輝(キム・ミョンヒ)コーチを監督に昇格させた。金監督は攻撃陣を整備し、以後ほぼ五分に近い成績を残し、残留圏まで勝ち点3差まで詰めてきた。
湘南は8月に曺貴裁監督のパワハラ問題が発覚し、Jリーグの調査開始にあたって曺監督が指導を自粛、第23節から高橋健二コーチが代行で指揮をとっている。しかしその後の5試合は2分け3敗。第27節には、ホームで清水エスパルスに0-6の大敗を喫した。
残留争いが大変なのは、関係するチームが多いことだ。勝ち点31のG大阪と湘南の上には、わずか1差の勝ち点32で浦和、ベガルタ仙台、名古屋の3チームが並んでいる。今季序盤には首位にも立った名古屋と、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で準決勝進出を果たした浦和が関わっているのは大きな驚きだ。
■優勝争い激化、4チームに絞られ
もちろん、終盤に向け、優勝争いも激化している。
一時は2位に勝ち点6の大差をつけ、首位を快走していたFC東京だったが、ラグビー・ワールドカップによる8月下旬からの「アウェー8連戦」の前半4試合の成績は1勝2分け1敗。第26節には鹿島アントラーズに0-2で敗れ、勝ち点1差にまで詰め寄られた。この4試合の総得点はわずか3。26、27節と無得点が続いているのが気になる。鳥栖、神戸、大分、磐田と続く「後半戦」をどう戦うかに、Jリーグ初優勝がかかっている。
鹿島は連覇を狙っていたACLの準々決勝で敗退、Jリーグで9回目の優勝に全力を注ぐ形となった。夏にMF安部裕葵、DF安西幸輝、FW鈴木優磨が欧州に移籍、大幅な戦力ダウンが懸念されたが、柏からMF小泉慶を獲得、法政大から2021年に加入予定だったFW上田綺世を1年半も早めて7月に加入させることでなんとかチームを整えた。
FC東京と鹿島の成績次第では、このほか、首位FC東京(勝ち点53)から4差の3位横浜M、そして5連勝で7差に迫り4位に上がってきたセレッソ大阪も、優勝争いにからんでくる可能性がある。
通常、下位チームが上位チームに追いつく可能性のある最多の勝ち点差は、試合数と同数といわれている。「残り7試合」なら、勝ち点で「7差」だ。「残留争い」では、前述した湘南、G大阪、浦和、仙台、名古屋だけでなく、鳥栖(勝ち点28)から7差の10位清水、ヴィッセル神戸(ともに35)も、まだ安心できる状況ではない。一方の優勝争いは、FC東京、鹿島、横浜M、C大阪の4チームに絞られた。第27節に神戸に敗れてFC東京との差が9となった川崎フロンターレ(5位)の3連覇は、Jリーグが「不可能がないリーグ」であるとはいっても、よほどのことがない限り難しい状況だ。