独検察、VW社長・会長起訴 排ガス不正の開示遅れで
【フランクフルト=深尾幸生】ドイツの検察当局は24日、独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長ら3人の現旧VW首脳を起訴したと発表した。2015年に発覚したディーゼル車の排ガス不正問題で意図的に公表を遅らせ、株価形成をゆがめた罪という。不正の発覚から4年を経て、現職トップの起訴という異例の事態に発展し、経営への影響は避けられない。
起訴されたのはディース社長のほか、最高意思決定機関である監査役会のハンス・ディーター・ペッチュ会長と、発覚時に社長だったマルティン・ヴィンターコーン氏の3人。VWは「法廷で検察の主張が誤りだと明らかになる」との声明を発表し、争う姿勢を示した。24日のVWの株価は一時、前日比3%安となった。
VWの排ガス不正は15年9月18日に米国で公になった。全世界で約1100万台のディーゼル車が有害物質の排出を不正に操作するソフトウエアを搭載。VWはこれまでに300億ユーロ(約3兆5500億円)を超える罰金や賠償金を支払った。
同社株を巡っては、不正発覚直後に株価が急落したことで投資家が損失を被ったとの告発を受け、検察が捜査を進めてきた。
検察によると遅くともヴィンターコーン氏は15年5月、ペッチュ氏は同6月、ディース氏は同7月には巨額の罰金を支払うことにつながる事実を知っていたとしている。
VWのヒルトルド・ヴェルナー法務担当取締役は「検察の主張は根拠のないものだ。VWは法的な報告義務を満たしていたと確信している」との声明を発表した。ディース氏ら3人はいずれも起訴内容を否認している。今後は裁判所が起訴を受理するかを判断し、受理すれば裁判が開かれることになる。
排ガス不正発覚直後にヴィンターコーン氏は社長辞任に追い込まれた。現地メディアによると、ディース氏は起訴が社長の職には影響しないとの声明を出した。ディース氏がVWに入社したのは15年7月で、排ガス不正の影響を予見しえなかったとしている。
ディース氏は入社以来VWの改革を進めてきた。多額の罰金などにもかかわらず、VWの業績は排ガス不正前の水準を回復している。ただ、自動車市場の成長が停滞し、電気自動車(EV)など次世代技術の投資がかさむなか、経営トップの起訴という新たな難題を抱え、改革のスピードが鈍る恐れもある。