バイデン氏息子の調査を要請か トランプ氏、ウクライナ大統領に
【ワシントン=永沢毅】複数の米メディアは20日、トランプ米大統領が野党・民主党のバイデン前副大統領の息子に関する調査に協力するようウクライナのゼレンスキー大統領に繰り返し求めていたと報じた。同国への経済支援を交換条件に圧力をかけていた疑いもあり、民主党は事実関係を明らかにするよう要求している。政権の新たな火種となりつつある。
問題となっているのは7月25日の米ウクライナ首脳の電話協議の内容だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、トランプ氏はゼレンスキー氏に対し、自らの顧問弁護士ジュリアーニ元ニューヨーク市長と調査で連携するよう8回も働きかけた。
バイデン氏はオバマ前政権の副大統領だった2016年、ウクライナの民間ガス会社を捜査していた同国の検事総長を解任させようとした。このガス会社の役員にはバイデン氏の息子が名を連ねており、月5万ドル(約550万円)の報酬を受け取っていたとされる。トランプ氏は、バイデン氏の働きかけには、何らかの理由で息子をかばう目的があったとみている。
一方、トランプ氏がウクライナ側にバイデン氏を巡る調査を求めているとすれば、民主には20年大統領選をにらんだ「政敵潰し」にみえる。バイデン氏は民主の指名候補争いで首位を維持している。トランプ氏は20日、電話協議でバイデン氏について話したかどうかホワイトハウスで記者団に問われると「何を話したかは問題ではない」と答え、確認を避けた。
疑惑を深めているのはトランプ政権が7月、ウクライナへの2億5000万ドル(約280億円)の軍事支援を保留した事実だ。ウクライナに対し、支援を実行する見返りとして調査への協力を求めたとの観測もある。
米メディアは今週、トランプ氏が海外首脳との電話で「不適切な約束」を交わしていたとの疑惑が米政府当局者による内部告発で浮上したと相次ぎ報道していた。内部告発をしたのは米情報機関の当局者で、時期は米ウクライナ首脳の電話協議の2週間あまり後の8月中旬だったという。
告発を受け取った監察官は19日、下院情報委員会で非公開の証言に応じたが、内容に関して明らかにしなかった。シフ下院情報委員長(民主)はマグワイア国家情報長官代行が議会への通知を阻んでいると批判した。トランプ氏は「告発は党派的だ」と反論している。