豚コレラ対策、豚にワクチン接種へ 農相が方針表明
江藤拓農相は20日、豚コレラ対策として、飼育する豚へのワクチン接種を認めると表明した。想定以上に広い範囲で感染が広がり、これまで禁じていた予防ワクチン接種の実施に方針転換する。発症予防に効果が期待できる一方、豚肉の流通には制限も生じる。今後、実施地域など具体的な内容を有識者や自治体などと調整する。
江藤氏は同日開いた豚コレラ防疫対策本部の会合後の記者会見で、防疫指針の改定作業に着手すると表明した。ワクチン接種を実施するかどうかの最終判断は都道府県知事がする。
豚コレラは強い伝染性と致死性を持つ家畜伝染病で、昨年9月に岐阜県の養豚場で26年ぶりに再発生が確認された。野生イノシシなどを通じてウイルスが拡散し、1府7県に広がっている。
農林水産省が定めた防疫指針では、感染した豚は殺処分が原則で、予防ワクチンの接種は禁止している。ただ、終息のめどが立たないため指針の変更に踏み切る。ワクチンは現在の備蓄だけでは足りなくなる可能性があり、農水省は製薬会社に増産を要請する方針だ。
予防ワクチンを接種した豚の流通は一定の区域内に制限される。このためワクチン接種の実施場所は感染が広がっている地域に絞られる見通し。ワクチン接種をした国は国際ルールで「非清浄国」と位置づけられるため、輸出が難しくなる恐れもある。