DAOKO ラッパー超えた「表現者」へと脱皮
ヒット曲「打上花火」で知られる女性シンガー・ラッパーのDAOKO(22、だをこ)が、約1年半ぶりのワンマンツアーの最終公演を東京で開いた。ライブは世間に浸透したイメージをガラリと変える驚きにあふれていた。
DAOKOには、どんな曲でも歌える器用な歌手という言葉が付いて回った。動画サイトに投稿した楽曲で注目され、2015年に大手レーベルからデビュー。米津玄師や小林武史らヒットメーカーが提供した楽曲を歌うコラボを展開し、人気を広げてきた。
「器用」は褒め言葉で使われた。"和製プリンス"岡村靖幸の艶美な曲、Perfumeをプロデュースする中田ヤスタカの抑制的な音楽。カラーが全く異なる楽曲を高いレベルで歌えるボーカリストはめったにいない。それどころか、アイドル的な親しみやすさと清らかさを併せ持つ独特の歌声を武器に、自分の世界観を加えて表現していた。
だが、こうした「器用」の枠にとどまることが物足りなくなったのだろう。個人事務所を立ち上げて初めて開催した今回のツアーでは、コラボの有名曲を封印。最終公演でも、インディーズ時代の曲をたくさん披露した。
これらの曲の詞は自作で、抑圧する世界への憂鬱さやもがきを等身大の言葉で表し、自らの世界観がより色濃く出ている。さらにステージでは初のバンド演奏で歌った。音圧をかけるギターにかき消されないように荒々しく声を張り上げる様は、デジタル音におしゃれに歌を載せていた従来の姿と違うものだった。
公演の終盤、真っすぐな瞳で「自分の音楽を見つける」と客席に語りかけていた。はやりの歌手で終わらず、時代の表現者として自分の音楽を深める。そんな決意表明のように聞こえた。13日、東京・鶯谷のダンスホール新世紀。
(諸岡良宣)