アフリカ豚コレラ、韓国でも発生 拡散懸念で豚肉価格3割上昇
【ソウル=恩地洋介】強い感染力と致死性を持つ豚の伝染病「アフリカ豚コレラ」に感染した豚が、韓国で17日以降に相次いで見つかった。感染拡大による供給懸念から、豚肉の卸売価格は3割上昇した。豚肉が大衆料理に多く使われる韓国で関連産業の裾野は広く、経済への悪影響は避けられない。海を隔てた日本は流入阻止へ一段と強い水際対策が問われる段階になった。
韓国の農林畜産食品省は17日に続き、18日にもアフリカ豚コレラに感染した豚を確認したと発表した。感染豚の見つかった畜産場は、ソウル北方で北朝鮮と隣接する京畿道の坡州(パジュ)市と漣川(ヨンチョン)郡。一帯は養豚の盛んな地域で、当局は予防的な措置も含めて計1万200頭を殺処分する。
アフリカ豚コレラは豚やイノシシのウイルス性感染症。有効なワクチンがなく、致死率は100%に近い。猛威を振るっている中国では終息の兆しがなく、すでに100万頭を超す豚が殺処分された。2019年に入り、アジア各地に感染は広がっている。国際獣疫事務局(OIE)の調べでは、東アジアで発生が報告されていないのは日本と台湾だけだ。
韓国の感染経路は明らかになっていないが、養豚場はいずれも北朝鮮とつながる河川の近くにある。北朝鮮では5月に発生が報告された後、感染拡大が取り沙汰されていた。イノシシなど野生動物を通じて感染が広がる可能性があり、韓国当局が厳戒態勢を敷いていた。
発生が明らかになった17日、韓国で豚肉の卸売価格は1キログラム当たり5800ウォン(約530円)と前日比で32.4%上昇した。サムギョプサルやキムチチゲなど、豚肉は韓国の代表的な料理に欠かせない。2017年の国民1人当たりの豚肉消費量は24.5キログラムと、鶏肉(13.3キログラム)や牛肉(11.3キログラム)を大きく上回る。
韓国の専門家によると、豚肉関連の産業規模は生産高で数十兆ウォンにのぼり、国内で最大規模の食品産業とされる。豚肉消費量の3分の1を輸入に頼っているが、最大消費国である中国の輸入拡大で、国際市場でも価格の上昇や需給逼迫が見込まれる状況に陥っている。初期段階で感染拡大を食い止められなければ、外食産業や観光にも大きな悪影響が及び、経済の低迷に追い打ちをかけかねない。
韓国当局は人や車両の移動を厳しく制限する防疫体制をとっている。19日には18年に平壌での南北首脳会談から1周年を記念する政府行事が坡州市で開かれる予定だったが、アフリカ豚コレラ発生の余波を受け、規模を縮小したうえで開催地もソウルに変更された。