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日韓対立、韓国競馬界に飛び火 日本馬不在で困惑も

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9月8日、韓国ソウル近郊、果川(カチョン)市のソウル競馬公園で、コリアカップ(ダート1800メートル)、コリアスプリント(同1200メートル)の両国際競走が行われた。今年で4回目の両レースは、韓国馬事会(KRA)が競馬の国際化の加速を掲げて創設した。

過去3年は、初年度(2016年)のスプリントを香港馬が制した以外、全て日本馬が優勝。特に過去2年の「カップ」は、ロンドンタウン(牡6)が続けて圧勝した。だが、今年は一連の日韓対立を受け、KRAがレース4週前の8月11日に日本馬の招待見送りを表明。初めて日本馬抜きで行われた。競馬界にも飛び火した日韓対立は、進展する競馬の国際化が潜在的に抱える危うさも併せて示した。

日本馬が外れた結果、スプリントには韓国馬のほか、米国馬3頭と英国、フランス、香港馬各1頭の計6頭が参戦(全16頭)。カップ(全11頭)には、米国馬2頭と英国、香港の各1頭が出走した。スプリントの外国馬はもともと期待度は高くなかったが、16年に優勝馬(スーパージョッキー)を出したこともあり、香港のアグリーウォリアー(5歳去勢馬)が注目された。

遠征馬10頭の中で目玉クラスは「カップ」に出走した米国のローンセーラー(牡4)。勝ち星は2つだけだが、うち1勝は昨年9月のG3、オクラホマダービー(レミントン、約1800メートル)。昨年はケンタッキーダービー(8着)、ブリーダーズカップ・クラシック(6着)にも出走しており、出たレースの格だけなら過去の日本馬を上回る。国際レーティング(RT)も112と、頭一つ抜けていた。

特殊な馬場状態生かした地元韓国勢

だが、フタを開ければ、外国勢の出番はないに等しかった。結果を左右したのは当日の馬場状態。前日に台風13号が通過し、当日の馬場の含水量は現地で「飽和」と表現される16%。当日は曇りがちで、日本のダートなら乾燥が進み、タイムが速くなる流れだが、ソウルの状況は違った。終日、タイムを要しながら、先行馬有利の状況が続いた。

地元韓国勢は特殊な馬場状態をフルに生かした。スプリントでは、1番人気のブルーチッパー(4歳去勢馬)が2番手追走から直線で抜け出し、1分11秒1で快勝。重賞連勝で通算成績を8戦7勝とした。続くカップも先行馬の天下。最外11番枠のムンハクチーフ(牡4)が、向こう正面で果敢に先頭に立ち、そのまま押し切り優勝した。2馬身半差の2着もチョンダントッキ(5歳去勢馬)が2番手追走から流れ込み、3着は英国の伏兵アンバサドリアル(同)。1番人気のローンセーラーは3コーナー付近から後退して10着だった。

日本のダートG1でも米国馬は苦戦続きで、近年は遠征馬がほとんどいない。日韓のダートは広義の「砂馬場」という点で共通しており、今回の米国勢の惨敗は日本のダートを知っている者には、既視感のある光景だった。

創設以来初めて、韓国馬が両レースを制したが、外国馬招致を陣頭指揮したKRAのユ・スンホ海外事業団長は「(日本馬不在なので)むなしい」と、率直に漏らした。カップは確かに、過去3年より内容が薄かった。決着タイムは1分53秒3で、昨年優勝の日本馬ロンドンタウン(牡6)より2秒7遅い。今回、2番人気で5着だったドルコン(牡5)の昨年2着時の記録が1分53秒2で、これも下回った。

ドルコンは3月にドバイワールドカップの前哨戦、マクトゥームチャレンジ・ラウンド3(G1・ダート2000メートル)で、後にワールドカップ連覇を飾るサンダースノー(牡5)に首差の3着と健闘し、存在感を示した。今回は直前に主戦の外国人騎手が負傷で急きょ交代。当日は体重24キロ増で、身上の末脚が不発。これも内容の薄さの一因だった。

一方、スプリント優勝のブルーチッパーは今後への期待を抱かせた。3歳時の故障で1年4カ月も休養。今春に復帰してから連勝街道を走り、7月には釜山の重賞・オーナーズカップで、1600メートル1分36秒1という破格のレコードを出していた。今回のタイムも、昨年の日本馬モーニン(牡7)の優勝タイムより0秒4速い。

管理するキム・ヨングァン調教師(59、釜山)は、韓国を代表する名伯楽で、「日本馬が来ても勝つつもりで、十分に準備していた。この喜びは言葉にできない」と感想を述べた。馬主のチェ・ビョンブ氏は来年のドバイ遠征、1年後のカップ参戦のプランも示した。

招待見送りで格付け取り消しの代償も

日本馬の招待見送りは8月11日の外国登録馬発表に併せて公式化した。KRAの公示には「最近の日韓関係悪化による国民情緒などを考慮して」という短い説明が付された。関係者によると、7月に日本政府が半導体部品3品目の「輸出管理の強化」を発表し、対立が深まる中で、KRAは約1カ月、日本馬の扱いを議論したが、内部でも賛否は分かれたという。「スポーツと政治は別」という原則論もあったが、結果的には世論悪化への懸念が勝った。

国際競走2戦の賞金総額は各10億ウォン(約9165万円=優勝馬に57%を配分)で韓国最高。日本馬が連勝でもすれば、「自分たちの買った馬券で……」というファンの不満が高まり、韓国内で広がる日本製品不買運動の対象になりかねない。また、ユ団長は「競馬場は多くの人が集まる。表彰式などで一人でも挑発的な言動をしたら……。人馬への危害の可能性も考えた」と話す。

招待見送りは代償も伴った。韓国は16年7月に国際競馬統括機関連盟(IFHA)のパート2国に昇格。今年は両国際競走が国際G3の格付けを認められる予定だった。だが、格付けの基準となるRTを下支えしてきた日本馬が不在のため、格付けは取り消し。KRAは関係者への通知に追われた。また、8月16日にユ団長自らが来日し、日本中央競馬会(JRA)などの関係者に事情を説明し、「申し訳ない」との意思も伝えたという。

では、現地のファンは今回の件をどう受け止めていたか。韓国では有料メールで顧客に予想を配信するフリー予想家が多いが、その一人は「スプリントの後、観客や他の予想家の間で『これは何だ』という反応が多かった」と話す。最高着順が8着(ハートウッド=米国)という外国勢の不振に、失望感を示す人が多かったというのだ。

目の肥えたファンほど、自国の馬の競争力をよく知っていて、国際レースに「強い馬が競う、競馬らしい競馬を見たい」と期待しているという。カップ連覇のロンドンタウンについては、「顧客から『日本でどの程度のレベルなのか』という質問を受けた」とも。

一方で、「(日本馬招待見送りは)仕方なかった」という意見も、関係者の間では多かった。背景には、韓国内でそもそも競馬への風当たりが強い事情がある。韓国で競馬が始まったのは、日本の植民地統治時代の1920年代前半。ギャンブルへの否定的な世論が強い中で、財政資金確保の手段として命脈をつないで来たのは日本と同じだが、儒教の影響のためか反ギャンブルの雰囲気は日本より強く、競馬はずっと矢面に立たされてきた。

メディアの扱いにも大差があり、地上波テレビの中継はなく、スポーツ紙にも常駐の記者はいない。日本では早くからテレビで中継され、70年代前半にハイセイコーが現れると、電波に乗って国民的アイドルになれた。だが、韓国では同様の環境が整うことはなかった。個人馬主制導入は93年で、それまではKRAが競走馬を保有していた。競争が働かないため、馬の資質面でも後れを取り、今も単なるギャンブルとして認識されがちだ。

メディアの冷遇ゆえにイメージが改善せず、不祥事でもあればたたかれる。この悪循環から抜け出せず、しかも類似業種の中でも、規模が大きい分、スケープゴートになりやすい。昨年は売り上げが前年比3.4%減で、政府の経営評価がC(普通)からD(不十分)に落ちた。これとて、ネット投票や場外発売所増設が世論の反対で進まないためだが、10月に行われる国会の監査を前に、「下手な目立ち方はできない」と身構えていた。

日本馬の招待見送りの決断は、こうした流れの中で下された。日本で広がる「反日で噴き上がる韓国」という一般的な認識とは全く異なる、競馬界固有の文脈を抜きに語れない。

主催が国際団体か国内団体かで明暗

今回の一件は、競馬の国際化が抱える弱点も映し出した。「国際」レースといっても、特定の国の競馬施行者が主催しているのだ。日韓対立が激化した後も、光州市で世界水泳選手権、釜山市では野球のU-18(18歳以下)ワールドカップが開かれ、日本も参加した。両大会と競馬の差は、主催が国際競技連盟か、KRAという国内の団体かの差である。

ブリーダーズカップやドバイ国際競走も、主催はIFHAではなく、米国やアラブ首長国連邦(UAE)の競馬施行者だから、特定国との関係が悪化すれば、似た問題は起こりうる。実際、サウジアラビアとイランの対立の余波で、カタールとUAEは17年6月に断交。ここ2回のドバイ国際競走にカタール馬は出走していない。

国際競技団体主催の大会なら、相当に厳しい条件を満たさない限り、特定国の排除はできない。だが、競馬は賭けを伴うのが通常で、一般のスポーツよりも政府の統制に左右されがちだ。今回の韓国の事例も、こうした脆弱さが現れたといえる。KRAのユ団長は「来年は必ず正常に施行する」と述べたが、日韓の対立は現状では出口が見えない。解決はともかく、国際競走ができる程度に事態が沈静化するかどうか、誰も予断はできない。

(野元賢一)

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