女性輝く助けに、関西発で工夫 山村輝治ダスキン社長
未来像
■ダスキンは創業時からサービスを通じて働く女性を支援しながら、短時間でも働きやすい仕事を主婦に提供してきた。ハウスクリーニングなど全スタッフの約8割を女性が占める。創業時から女性に支えられて成長を続けている。山村輝治社長(62)は女性活躍の重要さを身にしみて感じている。
今年でダスキンに入社して37年目になる。若手時代に11カ月だけ名古屋に赴任した期間を除き、生まれてからずっと大阪で過ごしてきた。もともとは大学卒業後に小学校で教員をしていた。大学時代からずっと卓球に取り組んできたため、ダスキンが女子卓球部を新設する際にコーチとして招へいされた。そもそもダスキンが何をやっているかも一切知らなかった。
入社後は、昼間は営業担当、夕方以降はコーチとして働く日々を過ごしていた。ダスキンではずっと営業畑を歩んできた。入社した当時は、派遣や時短勤務などはなかったため、女性は結婚とともに退職する「寿退社」が当たり前だった。
営業をしているなかで気がついたのは、ハウスクリーニングやモップなどの商品を主に使うのは女性だということ。そこに何かを売り込むには要望に共感できる女性の方が良いというのは自明だった。今も訪問販売のスタッフはほぼすべて女性だ。
■ダスキンでは女性が多く、結婚しても働き続ける社員が多かった。1986年に男女雇用機会均等法が施行されてからは結婚しても働く女性が増え始め、共働き世帯が増加してきた。
ハウスクリーニングなどあらゆるサービスを大阪から広めてきた。家事代行サービス「メリーメイド」もその一つだ。89年にアメリカから日本に持ち込み、今年で30周年を迎えた。当初は富裕層が使うイメージが強く、金銭感覚がシビアな関西では利用は増えなかった。近隣から「主婦が家事をさぼっている」と白い目で見られることを嫌がる人も多かった。
2000年前後からは99年に施行された男女共同参画社会基本法の影響からか、男性も考え方が変わり、進んで家事を手伝うようになってきた。その頃から夫婦で家事を分担していてもサボっているという見方はされなくなった。
スタッフは当時からフルタイムではなく、時短勤務が当たり前で、子育てをしながら働ける場を提供してきた。ハウスクリーニングも家事代行も、一日中働く必要はなく家事との両立も可能だ。
■商店街でよく見かけるいわゆる「大阪のおばちゃん」。パワフルでコミュニケーションもうまい。関西では女性のリーダーが多いとされているが、それもうなずける。もっと女性の力を生かせる環境をつくる必要がある。
関西企業は女性の働きやすい環境を構築するため、産休や育休の後に戻ってきやすい現場をどうつくるかが大事だ。子育てや介護を理由に職場を離れた人が戻ってこられる制度も必要だ。人口が減少していくなかで人手不足は更に深刻になる。そんなときに女性が働きにくい会社では駄目だ。大切なのは女性の生活にいかに寄り添えるかだ。
社内の声に耳を傾けて、多くの声が上がっているものを取り込んでいく必要がある。他社がやっているからと何でも取り入れてしまえば、自然と制度に甘えてしまう人も出てきてしまう。それは防がなければならない。
ダスキンもハウスクリーニングなどサービスを単に提供するだけでなく、消費者の声を拾い上げ、悩みの解決につながるサービスを組み合わせて提案できるようにしたい。関西から生まれたサービスで全国の女性を支援していく。
(聞き手は下野裕太)
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