相手のフィジカルと人工芝、W杯2次予選で要警戒
サッカージャーナリスト 大住良之
日本のほか、キルギス、タジキスタン、ミャンマー、モンゴルの計5カ国で争われている2022年ワールドカップのアジア2次予選F組。全10節のうち9月5日と10日に2節を終了し、2連勝で勝ち点6のタジキスタンが首位に立ち、日本とモンゴルが勝ち点3で並んでいる。
5チームでのリーグ戦のため、各節1チームが休みとなり、第1節は日本、第2節はキルギスがオフ。10月10日に行われる第3節はタジキスタン、15日の第4節はミャンマー、そして11月14日の第5節はモンゴルが休みとなり、ここで「前半戦」が終了して各国が4試合消化で並ぶことになる。組分けが決まったとき、「第4節のタジキスタン戦、第5節のキルギス戦がヤマ」と書いたが、そのとおりになりそうな気配だ。
■モンゴルのミャンマー戦勝利は驚き
日本が休みの第1節は、モンゴル―ミャンマー、タジキスタン―キルギスの2試合が行われ、いずれもホームチームが1-0で勝った。国際サッカー連盟(FIFA)ランキングではともに下位のチームがホームの利を生かして勝ったことになるが、モンゴルの勝利は驚きだった。
1次予選でブルネイを2-0、1-2で下して初めて2次予選に進出したモンゴルは、ミャンマーに押されながらも、17分に目の覚めるようなスピード攻撃から18歳の長身MFドゥルグン・アマラが挙げた得点を守りきった。
ただ、モンゴルは第1節に続き第2節もホームのウランバートルで戦ったが、タジキスタンに0-1で敗れた。非常に激しい試合で、決勝点は81分。右からのクロスに合わせてタジキスタンのDFダフロンジョン・エルガシェフがゴール前に飛び込み、ヘディングで決めた。モンゴルも猛反撃をかけたが、ゴールを奪うことはできなかった。
日本は第1節が休みで、第2節のアウェー、ミャンマー戦からのスタート。前半にMF中島翔哉とMF南野拓実が得点を挙げ、危なげなく2-0で勝ちきった。後半の攻撃に課題は残ったが、90分間を通じて守備は緩みがなく、万全の勝利といってよいだろう。雨期で試合日にもキックオフの5時間ほど前から強い雨が降り続いたにもかかわらず、ピッチの状態はまずまずで、日本のすばやいパス攻撃が生きたのは助かった。
アジア予選で警戒しなければならない主要な「わな」は、アウェーゲームでの気候の変化とピッチコンディションといわれる。幸いなことに、今回の2次予選F組には猛暑の中東の国はなく、蒸し暑さを懸念されたミャンマーも雨で気温が下がり、過酷とはいえなかった。だがピッチは、今後も気をつけなければならない問題だ。
10月10日の第3節モンゴル戦(埼玉スタジアム)に続いて行われる第4節、10月15日のタジキスタンとのアウェーゲームの会場、ドゥシャンベのパミール・スタジアムは、人工芝だからだ。
■人工芝、公式練習1回で慣れる必要
日本代表は11年のワールドカップ予選でもタジキスタンと当たり、同じスタジアムでプレーしている。しかし当時は天然芝。11月の試合、天候は悪くなかったが、2日前の大雪で傷んだピッチは日本代表を苦しめた。そのピッチが現在は人工芝となっているのだ。
8年前と違い、凹凸や場所による土の露出などはない。しかし多くの日本選手は通常天然芝でしかプレーしておらず、人工芝は使用年数によって状態もずいぶん違うので、現地に着いてからおそらく1回しかできない競技場を使っての公式練習で慣れるしかない。
この試合の後、11月14日に行われる第5節、キルギスとのアウェーゲームが行われるビシュケクのスタジアムは天然芝のようだが、来年3月のモンゴルとのアウェーゲームも人工芝になる可能性が高い。「人工芝対策」はこの2次予選の重要な要素になりそうだ。
しかし最も警戒しなければならないのは、やはり対戦相手だ。33位の日本に対し、キルギス95位、タジキスタン119位、ミャンマー135位、モンゴル187位と、FIFAランキングではすべて日本より圧倒的に低いが、第1節と第2節の試合を見る限り、どのチームもフィジカルが強く、ピッチ全面で非常にハードな試合を展開している。
なかでもタジキスタンとキルギスは激しい寄せと球際での強さが際立ち、相手選手がプレーした直後にも体当たりしてくるようなプレーが少なくない。そのうえにホームの観客の熱狂的な声援が加わると、あきらめずに90分間フィジカルな戦いを貫く力になる。
第4節、10月15日のタジキスタン戦、第5節、11月14日のキルギス戦の「アウェー連戦」がヤマであることは間違いない。第3節、10月10日に埼スタで行われるホーム初戦であるモンゴル戦を含めて今年の残り3試合をきっちりと乗り切り、全10節の半分、「前半戦」を首位で折り返すことが何よりも重要だ。
来年3月からの「後半戦」は4試合中3試合がホームゲームとなるので、「五輪世代」の若い選手たちも試しながら、9月にスタートする最終予選への準備を進めることが可能になるだろう。