諫早湾訴訟、司法判断の「ねじれ」とは(Q&A)
国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡る最高裁判決が13日に言い渡された。事業や法廷闘争の経緯についてまとめた。
Q なぜ干拓事業を進めたのか。
A 農業用地を増やす狙いがあった。各地で干拓が進められる中、諫早湾でも1986年に事業に着手した。97年に全長約7キロの潮受け堤防を閉め切った様子は「ギロチン」と呼ばれた。
堤防の内側に約670ヘクタールの農地と農業用水を供給する調整池約2600ヘクタールが整備され、2008年には営農が始まった。総事業費は約2530億円。
Q 漁業者はなぜ事業に反対しているのか。
A 漁業者側は堤防閉め切りで不漁になったと主張して開門を求めている。一方、営農者側は農地に塩害が生じるとして開門に反対。漁業者、営農者双方がそれぞれ開門、非開門を求めて国を相手に裁判を起こした。
Q 法廷闘争で生じた司法判断の「ねじれ」とは何か。
A 2010年に福岡高裁が開門を命じる判決が出した際、民主党政権の菅直人首相(当時)が政治判断で上告を見送り、判決が確定した。一方、13年と17年に開門を差し止める決定や判決も出て確定した。国は開門、非開門の相反する義務を負う状態になっている。
Q 13日に最高裁で判決が言い渡された訴訟では何が争点になっているのか。
A ねじれ解消のため、国は開門を命じた10年の確定判決について「事情が変わった」として無効にするよう訴訟を起こした。国は開門請求の根拠となる漁業権はすでに消滅したと主張し、漁獲量が増加に転じたこと、国が和解案を提示したことなども事情変更の具体例として挙げている。
漁業者側は「国が確定判決を守らないことを裁判所が認めるなら、誰も裁判所を信用しなくなる」と反発していた。