トルコ中銀、政策金利3・25%下げ 2会合連続下げ
【イスタンブール=木寺もも子】トルコ中央銀行は12日、金融政策決定会合を開き、主要な政策金利である1週間物レポ金利を年率3.25%引き下げて16.50%にすると決めた。7月に続き2会合連続の利下げ。物価上昇率は縮小傾向で、金融緩和を進めて景気をテコ入れする好機だと判断した。金融政策に介入するエルドアン大統領の意向が働いた可能性もある。
利下げ幅は事前の市場予測(2.75%)を上回った。中銀は声明で、リラ相場の安定に触れ「インフレ見通しは改善を続けている」とした。「経済活動は緩やかな回復が続いている」との認識も示した。
声明発表後、リラは対ドルで前日比1%超反発した。証券会社のデニズ投資のオルクン・ギョデク氏は「市場はより大幅な利下げに身構えており、この数日でリラを売っていた投資家が買い戻している」と説明した。
中銀は、2018年9月に1週間物レポ金利を24%に引き上げた。「トルコショック」と言われるその直後、一時は前年同月比で25%を超えたインフレ率も、足元では同15%台まで落ち着いてきた。これに伴い通貨防衛のため、24%まで引き上げた政策金利は段階的に引き下げるというのが中銀の基本路線にある。
19年7月には米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じた。グローバルな金融緩和の流れにも乗る形で、トルコ中銀は今後も年末にかけ、利下げを続けるとの見方が市場関係者の間では大勢を占めている。
中銀に対して公然と利下げ圧力をかけるエルドアン大統領は7月、利下げの指示に従わなかったとして前中銀総裁を更迭した。新総裁は7月の前回会合で市場予想を上回る4.25%の利下げを実施し、エルドアン氏の望みに応えた。さらにエルドアン氏は9月上旬、「まもなく金利は1桁になる」と息巻いた。ただ利下げのペースが速すぎればインフレの悪化や通貨リラの下落を招きかねない。
リラ相場は昨年の通貨危機の原因となった対米関係が重荷となっている。ロシアからの導入が始まったミサイル防衛システム「S400」を巡り、米国から経済制裁を科されるリスクが付きまとうためだ。
最近のロシアへの接近ぶりから、米政府や議会内ではトルコ制裁論が高まっている。ムニューシン米財務長官が9日、制裁について「検討している」と述べると、リラは対ドルで前日比1%近く下落した。
昨夏の金利の大幅な引き上げと、通貨急落に伴う物価高騰は個人の消費や企業の投資意欲をそぎ、トルコ経済は19年4~6月期まで3四半期連続で前年同期比マイナス成長を記録した。トルコ商工会議所連合のヒサルジュクルオール会頭は11日、地元通信社に「利下げ路線は歓迎だが、まだ足りない」と訴えた。
一方、18年を通じ対ドルで3割も下落したリラ安の恩恵でトルコのサービス収支をけん引する観光業は1~7月、前年同期比14%増となる2500万人の外国人観光客を呼び込んだ。内需や輸入の低迷から貿易赤字は縮小。トルコは慢性的な経常赤字国だが、中銀によると、19年6月までの1年間の経常収支は17年ぶりにプラスに転じた。