オリックス先発陣定着へ 竹安、人的補償から再出発
プロ野球選手に移籍は付きものだが、フリーエージェント(FA)に関わる「人的補償」での移籍となれば別物だ。オリックスから阪神へFA移籍した西勇輝投手の人的補償で、阪神からオリックスへ移った竹安大知投手の心境も複雑だった。
戦力不均衡を緩和するため、FA補償制度がある。金銭、人的、またはその併用。人的補償ではFA選手獲得球団が自軍の28選手を「プロテクト(守る)」した名簿をFA選手の旧球団へ提出する。
名簿は非公開で、選手は人的補償に指名されて初めてそれを知る。「なぜ、オレはプロテクトされない」と感じるのは当然だろう。ただ、旧球団で主力選手だった広島・長野久義、西武・内海哲也(巨人・丸佳浩、炭谷銀仁朗のFA補償)と違い、阪神で1勝しただけの竹安には「なぜ」の根拠が乏しい。
■1軍キャンプ初体験、練習に熱入る
ほとんど2軍暮らしだったが、矢野燿大現監督が2軍監督だった昨季はファームで6勝無敗、防御率1.30の好成績を残した。それをよりどころに矢野監督が1軍へ"持ち上がり"してくれるという望みを抱いた。
その望みはかなわなかった。逆にオリックスは獲得可能選手に「竹安が入っている」と驚き、すかさず獲得を決めた。西と金子弌大(日本ハム)が抜けた投手陣は先発要員を求めていた。西の背番号「21」を竹安に与えて期待のほどを示した。
2月の宮崎で、阪神時代に参加できなかった1軍キャンプなるものを体験した。「パ・リーグ勢のパワフルな打撃に負けぬように」と、練習に熱が入った。
オリックスの投手としての初勝利は6月24日のセ・パ交流、神宮でのヤクルト戦だった。山田哲人に一発を浴びたが、八回途中まで5安打2失点の好投。最速145キロの速球、ゴロを打たせる低めの変化球が光った。
7月から先発ローテーションに本格的に加わった。ハイライトは8月17日、京セラドームでのロッテ戦。2安打、二塁を踏ませずプロ入り初完投、初完封を飾った。「京セラでお立ち台に立てたのがうれしい」。これでオリックスの一員に認められるだろうと喜んだ。
野球人生転換に絡んだ西とは、阪神の青柳晃洋のはからいで会食した。主力投手の心得や調整法を教わった。このところ、好投した西武やロッテに"仕返し"をされている。9月2日に調整のため2軍落ちした。
3勝2敗、防御率4.50は、まだオリックスの一員と胸を張れない。「状態が悪いとき、どれだけ頑張れるかが飛躍へのカギ」と、西と話し合ったことを改めてかみしめている。
(スポーツライター 浜田昭八)