「陸の孤島」成田空港、1万人夜明かし 台風15号
9日に関東を縦断した台風15号の影響で東京都心部につながる主要な交通機関の運休が相次いだ成田空港では10日にかけ、1万人を超す人々が施設内で夜を明かした。鉄道やバスは朝から順次運行を再開したものの、寝袋を廊下に敷いて身を横たえていた利用客らは疲れの色が濃い。2020年東京五輪を前に、外国人からは情報発信の改善を求める声も上がった。
10日午前3時ごろ。空港第1ターミナルは1階から3階まで、寝袋や段ボールに身を包んで横になったり、床に座って携帯電話に目を落としたりする人たちであふれていた。スーツケースがそこかしこに転がり、雑然とした状況。眠っている人も手足を伸ばせず背中を丸めていた。
成田国際空港会社(NAA)によると、午前3時20分の時点で約1万3300人が第1~第3ターミナルに滞留。多くがそのまま夜を明かしたとみられる。
成田空港と都心をつなぐ鉄道やバスは9日、千葉市付近に上陸した台風15号の影響で一斉に運休。空港側は台風の通過を待って同日午前から滑走路の運用を始めたが、一時「陸の孤島」状態となっていたところに旅客機が次々と到着して人が増え、混雑した。
特に不安そうに過ごしていたのが訪日観光客だ。泣きながら故郷に電話をかける若い女性や、空港から配布された寝袋をもらえず戸惑っている中年女性もみられた。
10日午前には、運休していたJR成田線の千葉―成田空港間や京成線などが運行を再開。9日に乗り継ぎ便が飛ばず空港で一晩を過ごした米国人のジェニファー・サイさん(25)は本来の目的地の台湾へ向かうのを一旦中止し、ホテルで眠るため鉄路で都内へ向かった。「一睡もできなかった。今は一刻も早くベッドで休みたい」と疲れ切った様子だった。
「情報のない不安さ、騒音、硬い床、空腹。気が狂いそうだった」。10日午前7時ごろ、寝袋から起きた医師のクリス・キャンベルさん(71)は眠たげに目をこすった。オーストラリアから9日午後7時半に到着すると、レストランは長蛇の列で入れず、コンビニエンスストアの飲食物もすべて売り切れ。空港から配られた水とクラッカーだけで夜を明かした。
交通機関の復旧見通しを通りがかりの職員に尋ねたが、言葉がなかなか通じない。人混みをくぐり抜けて30分かけて英語に対応できる案内所にたどり着いたが、情報の更新はほとんどなかった。NAAは多言語での館内放送も流していたが「音声が不明瞭で聞き取りにくかった」という。
東京観光などのため、ポルトガルから初来日したティアゴ・モタさん(30)は「語学が堪能な職員の巡回を増やすなど、丁寧に情報発信するだけでも不安は和らぐ。来年の東京五輪・パラリンピックでは日本語が話せない観光客が押し寄せるだろう。ぜひ改善してほしい」と注文をつけた。
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