西川・日産社長、16日に辞任 暫定CEOに山内氏
後任決定は10月末までに
日産自動車は9日夜、横浜市内の本社で記者会見を開いた。西川広人社長兼最高経営責任者(CEO、65)が16日付で辞任すると発表した。後任は10月末までに指名委員会で決める計画で、それまでは山内康裕最高執行責任者(COO、63)が暫定的に代行する。日産のトップ交代は「日仏連合」の運営にも影響しそうだ。
西川社長については、元会長のカルロス・ゴーン被告による一連の不正を見逃した責任がある。株価連動型報酬制度(SAR)を巡る問題も浮上していた。
取締役会が辞任を要請し、西川社長が受け入れた。取締役会議長の木村康氏は「求心力からすると交代が適切」と述べた。西川社長も「ある意味で区切りが付いた。やや早いタイミングだが、取締役会で議論して辞任を決めた」と説明した。
西川社長の後任は社外の人材も候補に含める。7月の指名委員会で後任選びに着手し、約100人の候補者をすでに10人ほどに絞り込んだ。日産での勤務経験者も含まれる。指名委員会委員長の豊田正和氏は後任の条件を「世界の自動車産業に精通し、アライアンスやルノー、三菱自動車への深い理解と大きな関心があること」とした。
西川社長は2013年に行使日を遅らせてSARに基づく報酬を本来より多く受け取っていた。かさ上げ分は返納する。また、日産はこの制度を20年度に廃止する。木村氏は「違法性はなかった」としつつSARの恣意的な運用はあったとし「ガバナンス上、重く認識している」と述べた。
西川氏の退任論が一気に強まったのはこの1週間だ。4日の監査委員会で報告されたゴーン被告らによる問題の内部報告書で、西川社長の報酬問題も確認された。西川社長は5日、自らのかさ上げの事実を認めたが「ゴーン体制の仕組みの問題」とした。
その姿勢に他の日産幹部が反発。総額2500億円の社債発行も延期され、西川体制の継続が実務面にも影響を及ぼし始めた。17年9月からの完成検査を巡り4度発覚した不正にも「誰か責任を取ったのか」(横浜本社の社員)と社員は現経営陣に厳しい目を向ける。23年3月期までにグループ従業員の1割に相当する1万2500人を削減するには経営責任を明らかにする必要があった。
影響が懸念されるのが仏ルノー・三菱自動車と組む「日仏連合」の先行きだ。西川社長はゴーン被告に権限が集中した体制を改めるため3社の合議体制を設け、そのメンバーとなっている。辞任すれば「これまでの話もリセットになる」(日産関係者)。後任選びは日仏連合のかじ取りでも重い判断となりそうだ。
9日の取締役会ではゴーン被告らによる不正行為に対する社内調査の結果報告もあった。不正の総額を日産は350億円以上と推定。ゴーン被告らの責任を明らかにするため、損害賠償請求などの手続きをとるとした。西川氏は「(ゴーン被告は)一度も謝罪していない。悔いてほしい」と述べた。
日産自動車が選択を迫られている。
内田誠新社長のもと、業績をどう立て直すのか、筆頭株主である仏ルノーとの関係をどう再構築するのか。