新国立競技場前に五輪博物館 大会の価値・魅力を発信
2020年の「オリンピックスタジアム」となる新国立競技場の建設工事現場の前に9月14日、五輪の歴史などを学べる博物館「日本オリンピックミュージアム」がオープンする。博物館の前庭にある五輪マークの巨大モニュメントは開業前から早くも観光客らの記念撮影スポットになっており、来夏、博物館が五輪観光の目玉になることは確実だ。
博物館は日本オリンピック委員会(JOC)のオフィスなどがある「ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア」の1階(入場無料)と2階(一般の観覧料金は500円)に設置した。総整備費は約20億円。博物館を運営するJOCの山下泰裕会長は「ミュージアムを日本のオリンピックムーブメントの発信拠点と位置づけている。オリンピアンとともに五輪の価値、魅力を伝えていきたい」と強調する。
JOCは五輪出場経験のあるアスリートが館内を案内するサービスも計画中。開業前の報道機関向け内覧会では、北京、ロンドンの2大会で活躍した元新体操日本代表の田中琴乃さんらが小学生に五輪の歴史やスポーツの楽しさを伝えていた。
ミュージアムの副館長を務めるJOCの松丸喜一郎副会長は「すばらしいアスリートの経験を通して語られる言葉は来館者の心を打つと思っている。アスリートのガイドはまず試験的に導入し、来年から本格的に増やしたい」と意欲を見せる。
五輪憲章は「オリンピズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」としており、博物館も「文化・芸術や教育にもこだわったつくりになっている」(松丸氏)という。1階の「オリンピック・スタディー・センター」と呼ぶコーナーは子供が五輪に関するアクティブラーニング(能動的な学習)をする場として活用できる。
2階には美術家、日比野克彦氏による5つの輪を表現した絵画を展示するほか、「オリンピックシアター」でアスリートの躍動感を芸術的に表現した映像作品などを上映する予定だ。シアターのプロジェクターや音響設備などはパナソニックから調達。JOCは同社のショールームであるパナソニックセンター東京の所長を務めた浜崎佳子氏を博物館開設の準備段階から迎え入れ、展示や運営のノウハウなども吸収しているという。スポーツと文化・芸術の融合を体感できる。
「モニュメントエリア」と呼ばれる博物館の前庭は、撮影スポットになっている五輪マークのほか、日本初の国際オリンピック委員会(IOC)委員となった嘉納治五郎の像や1964年大会の聖火台のレプリカ(実物の4分の3)などが展示され、日本の五輪の歴史を振り返ることができる空間になっている。
博物館の周辺では、大改造が進む東京の風景が広がる。目の前の新国立競技場は11月末の完成を目指し、建設工事が最終段階に入っている。博物館の裏では、64年大会を取材した外国報道機関の宿舎として建設された「外苑ハウス」が建て替えられ、来春には地上23階建てのマンションが完成する予定。2020年大会後には、神宮球場や秩父宮ラグビー場を建て替える明治神宮外苑エリアの大規模な再開発も動き出す見通しだ。
日本オリンピックミュージアムはスポーツを軸に変貌する東京を象徴する場所とも言えそうだ。
(山根昭)