独、中国に投資増促す 首脳会談 香港「平和解決を」
【北京=羽田野主】訪中しているドイツのメルケル首相は6日、中国の李克強(リー・クォーチャン)首相、習近平(シー・ジンピン)国家主席と相次いで会談した。メルケル氏は李氏との会談冒頭で「あらゆる中国企業のドイツへの投資を歓迎する」と語り、独景気の浮揚に向けて投資促進を求めた。
習氏もメルケル氏に「両国は経済大国として自由貿易と多国主義を守る必要がある」と発言し、中国市場の開放を強調してドイツ企業の進出を促した。
メルケル氏は6~7日の日程で中国を訪問している。メルケル氏には独自動車メーカー首脳ら企業経営者らが同行している。ドイツの最大の貿易相手は中国。ドイツ経済は輸出不振で減速感が強まっている。米中対立で景気に不安を抱える両国が経済連携で一致した。
米国が唱える次世代通信規格「5G」からの華為技術(ファーウェイ)排除を巡る問題など、中国企業の投資受け入れには国際的な懸案もある。メルケル氏は共同会見で、対独投資を促す一方で「国家戦略にかかわる部門や重要なインフラへの投資には審査をする」とも話した。李氏は「ドイツがより多くの中国企業を受け入れ、一部製品の輸出規制を緩和するように望む」と応じた。
一方、メルケル氏は香港情勢を巡り、李氏との会談後の共同記者会見で「暴力は防がなければならない。対話のみが役立つ」と述べ、平和的解決を促した。「市民の権利と自由は認められるべきだと強調した」とも指摘した。
香港で「逃亡犯条例」改正案をきっかけとする抗議活動が始まって以来、中国を訪問する最初の西側の主要国首脳としてメルケル氏の対応に注目が集まっていた。
メルケル氏の発言に対し、李氏は香港政府を支持し「一国二制度」を堅持するという従来の原則的立場を繰り返した。
メルケル氏の訪中を前に、2014年に香港で起きた雨傘運動の学生リーダーだった黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏らはメルケル氏に書簡を送っていた。「独裁的で不公平な体制に対する勇気と決意をみせてくれることを望んでいます」などと訴えた。
メルケル氏は以前、民主活動家で事実上の獄中死を遂げた劉暁波氏の妻、劉霞さんの出国許可を中国政府に働きかけ、ドイツで受け入れたことがある。経済協力を優先し、中国を刺激しかねない香港問題での突っ込んだ発言は避けたもようだ。