「米中からの直接投資増加」マレーシア副貿易産業相
日経フォーラム
日本経済新聞社は3日、クアラルンプールでマレーシアの成長機会や課題を討議する「日経フォーラム」を開いた。登壇したマレーシアのオン・キアンミン副貿易産業相は「米国の多国籍企業や中国からの直接投資の申請が増えている」と述べ、米中の貿易摩擦による好影響を強調した。
オン氏は「貿易戦争の初期は中国の代替拠点を求める動きが目立ったが、今は事業拡大のための投資が増えつつある」と指摘した。新たに進出する中国企業を定着させるためにサプライチェーン(供給網)を整備する重要性に触れる一方、中国企業が廃プラスチックなどの環境基準を満たしているか監視を強化する考えも明らかにした。
マレーシアへの海外直接投資額は1~6月期に495億リンギ(約1兆2400億円)と前年同期に比べ97%増えた。製造業の直接投資の半分近くを米国が占めるなど、米中からの投資が目立つ。
東南アジア諸国連合(ASEAN)各国など16カ国が交渉する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に関しては「アジアが多国籍の貿易協定を推進しているというメッセージを世界に示したい」と述べた。「年末までに何らかの合意ができるといい」とも話し、交渉加速に期待を示した。11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)については「米国の脱退によって効果は薄れた」と、批准に依然慎重な姿勢をみせた。
マハティール首相の腹心であるダイム・ザイヌディン元財務相は中国との関係について「相互に利益を得ることが重要だ」と強調した。ダイム氏は中国との交渉役として中断していた東海岸鉄道の建設再開に尽力した。マレーシアが食料などを輸出する一方、中国が技術開発で協力すれば公平な関係が築けると述べた。長期計画を策定し、着実に実行する点などを中国から学ぶ必要があるとも述べた。
マレーシア証券取引所のウマル・スウィフト最高経営責任者(CEO)は「国内経済が安定成長している割に証券市場は活性化していない」として、ガバナンス(企業統治)改善を進めると説明した。野村アセットマネジメント・マレーシアのラジナ・ラヒム代表は「上場企業の時価総額を増やし、マレーシアの魅力を高めるには人材や研究開発への投資を増やす必要がある」と話した。(クアラルンプール=中野貴司)