ユニーク賞「もう一歩」5チーム 第19回学生円ダービー
独自の視点で円・ドル相場を予想した学生を表彰する「第19回全国学生対抗円ダービー・ユニーク賞」は、「もう一歩賞」に4大学5チームが選ばれた。ユニーク賞の受賞がなかったのは3年ぶりだ。
学生対抗円ダービーには中学校から大学まで48校277チームが参加した。予想値の正確さで順位を競うのとは別に、これまでにない視点で為替相場に挑んだチームをユニーク賞として表彰している。選考委員は慶応義塾大の藤田康範教授と三井住友DSアセットマネジメントの宅森昭吉理事が務めた。
もう一歩賞のうち、神戸大経済学部3年の西岡ゆきなさんが代表を務めるチームは人工知能(AI)の基礎となる機械学習を予想に用いた点が評価を受けた。為替に関係する日米の景気変動を予測するため、企業の破産件数などをデータとして用いた。集めたデータは統計ソフトで分析し、円高と円安のどちらに振れるかを機械学習により判別した。
西岡さんは「初めて触れる統計ソフトの扱いに苦労したが、得られた知識を今後の論文作成などに生かしたい」と話していた。選考委員の藤田氏は「最先端の手法にトライする姿勢は評価できるが、AIが出した結果を『なぜそうなるか』と考察できればもっとよかった」とコメントした。
慶大からは2チームが選ばれた。経済学部2~4年の5人で参加した桜井京子さんのチームは「米大統領選挙の年は米国株が上がりやすい」など特定の時期に市場でみられる変則的な動き(アノマリー)を予想に生かした。「金曜に特定のアニメ映画がテレビで放送されると円高が起こりやすい」など多くのアノマリーを検証した一方、「アニメ映画の放送日が米国の雇用統計の発表日と重なる点など、もう一歩の分析が欲しかった」(選考委員の宅森氏)
経済学部3年の蒲池舞乃さんら5人のチームは米中貿易戦争の影響を詳しく調べた。6、7月の2度にわたる予想で米中間の対立が業績に影響をもたらす企業の株価を為替予測のためのデータに用いた。6月の予想では日本の製造業を中心に10社を選び、7月の予想では中国企業から16社を選んだ。選考会では「着眼点はよいが、一貫した分析が必要だった」(宅森氏)との声が聞かれた。
東北学院大経済学部2年の吉田奈央さんら3人のチームは銅価格と日米の経済成長が連動する点に注目した。メンバーは週2回ほど集まり、予想の作業を分担したという。銅価格と経済成長との関係はよく整理できていたが、為替相場との相関を検証できていればなお良かった。
学習院大経済学部3年の小坂翔太さんらはクールジャパンに注目し、日本のゲームの売り上げと為替レートの関係を考えた。広告動画の再生数をゲームの売り上げ予測に生かした視点は評価が高かったが、為替レートへの影響についての考察がもう一歩欲しかった。
どのチームも、着眼点や手法は評価され、惜しいところだった。あと一歩、なぜそうなるのか、データが相場とどうつながるのか、踏み込んで考えて予想の根拠を組み立てると、ユニーク賞に手が届きそうだ。