英首相、離脱前の解散総選挙を検討 英報道
【ロンドン=中島裕介】英BBCなど複数のメディアは2日、英議会で10月末の欧州連合(EU)からの離脱を阻害された場合に、ジョンソン首相が解散総選挙を議会に呼びかける方針だと報じた。合意なき離脱の阻止を狙う野党は3日から再開する英議会で、首相に離脱延期を強制する法案を提出する見通し。英メディアは首相官邸が10月14日に選挙日を設定したとも報じた。
労働党など野党は2日、合意なき離脱を阻止する法案の詳細をまとめた。「10月19日までにEUと合意した離脱協定案を英議会で承認できない場合に、首相はEUに2020年1月31日までの離脱延期を求める」ことを柱に据えた。与党内にはEU残留派や「合意なし」に反対する勢力が数十人おり、法案が可決される可能性は十分にある。
3日の議会では、野党議員側がこの法案の議事進行を支配するための動議を出し、採決される見通し。早ければジョンソン政権はこの採決で敗れた段階で「10月末の離脱が阻害された」として、解散の呼びかけを検討しているもようだ。
英国では議会任期固定法の規定で、解散には下院の3分の2の賛成か、内閣不信任案の可決が必要になる。最大野党の労働党のコービン党首は2日の演説で「(EU離脱問題の)解決には総選挙が必要だ」と述べた。ジョンソン氏が議会に解散を提案した場合、3分の2の賛成が集まる公算は大きくなっている。
ジョンソン氏は2日の声明で、10月末のEU離脱を阻もうとする「あらゆる動きを容認しない」と語った。そのうえで「ここ数週の間に、EUと(離脱条件で)合意できる可能性は高まっている」と強調した。離脱延期を狙う野党の動きを「自ら英国の立場を弱め、さらなるEUとの交渉を不可能にする」と批判した。
事態打開を図るための解散総選挙に関しては「私はしたくない。選挙をせずに離脱を実現しよう」と呼びかけた。ただジョンソン氏の選挙に否定的な発言は、英国内では額面通り受け止められていない。むしろ議会が合意なき離脱を阻止する法案の審議入りを決めた際に「離脱を邪魔する議会が正しいのか、信を問う」と国民に訴えるための伏線とみられている。