ウッズ、再び左膝手術 秋の来日・プレーは大丈夫か
ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ
10月24~27日、千葉県習志野CCで米男子ゴルフツアーのZOZOチャンピオンシップが行われる。日本で米ツアーの公式競技が行われるのは初。資金力もあり、ゴルフ人気も高い日本でなぜ、これまで試合が行われていなかったのかむしろ不思議なぐらいだが、もちろん米ツアーとしては何年も前から可能性を探ってきた。市場のポテンシャルを考えれば、これだけ魅力的な国はないのである。
話題性そのものは、「初」というだけでも十分なインパクトがあるが、早々にタイガー・ウッズ(米国)が参戦を決めたことは、これを機に日本での存在感、認知度を高めたい米ツアー側にとって、また、どうしても成功させたい日本の主催者側にとって、願ってもない追い風となった。
もちろん、日本のファンも恩恵を受ける。かつてウッズは毎年のように来日し、2004年と05年はダンロップフェニックス(宮崎県フェニックスCC)を連覇。06年も同大会に出場し、プレーオフでパドレイグ・ハリントン(アイルランド)に敗れたものの、ファンを沸かせている。ウッズが日本でプレーするのは、その06年以来。話題にならないはずがない。
追い風そのものは、ウッズが今年4月にマスターズ・トーナメント(オーガスタ・ナショナルGC)を制したことで、より強くなっている。メジャー大会の勝利は08年以来。マスターズ・トーナメントでは05年以来、5度目だ。18年のフェデックス・カップのプレーオフ最終戦、ツアー選手権(イーストレークGC)を制して5年ぶりに優勝したが、かといってまさか、メジャー大会で勝てるほど復調しているとは誰もが想定外だった。そのギャップこそが、世界中のゴルフファンを熱狂させた。
■大会にウッズの存在欠かせず
その後のメジャー大会では精彩を欠き、マスターズ・トーナメントの記憶はやや薄れつつあるものの、19年のマスターズ・チャンピオンとして来日する彼を、日本のファンは盛大に歓迎するだろう。アジアでの市場拡大をもくろむ米ツアー。来年の東京五輪に向けて弾みをつけたい日本のゴルフ業界。そこにウッズの存在は欠かせないはずだ。
ところが、ここにきて、その盛り上がりに水を差すようなニュースが流れた。先日、43歳のウッズが左膝を手術したというのだ。
彼の代理人は声明で「軽度な軟骨損傷の修復手術であり、そもそも手術というより、メンテナンスのようなものであり、来日の予定に影響はない」とし、ウッズ本人も声明の中でこうコメントしている。
「もう歩き始めており、数週間のうちに練習を再開できるだろう。10月、日本へ行ってプレーすることを楽しみにしている」
しかし、である。今年もマスターズ・トーナメントが終わってからウッズは6試合にしか出場していない。試合数を絞ったのは彼自身が「今後も、長くプレーするため」と説明しているが、全英オープンのときには腰痛により腰をかがめて靴ひもを結べないほど。あのときは「痛みがある」と認めた。プレーオフ初戦のノーザントラスト(リバティーナショナルGC)では、2日目を前に脇腹の軽度な張りで欠場している。
つまり、体の懸念は左膝だけではないのだ。そもそも手術をした左膝は、彼にとって爆弾である。メスを入れたのは今回が5度目といわれ、過去に前十字靭帯を損傷したこともある。来季を万全の状態で迎えたいのだとしたら、シーズン序盤で無理をする必要はない。そもそも無理をするようなら、昨季の試合数を絞った理由と言動が矛盾する。
実のところ、日本のファンとしても、強行出場を望んでいないかもしれない。というのも、先ほども触れたように来年は日本で五輪が行われる。もしもウッズが日本で左膝痛を再発させたり、あるいは長距離移動で腰の痛みを悪化させたりした場合、五輪の出場に関わってくるからだ。
■五輪も意識、慎重な判断必要に
米国男子の五輪出場枠は4つ。ウッズは現在、世界ランキング8位で、米国人選手の中では5番目。国内4位以内に入り、五輪出場を決めるのは、今年のマスターズを勝つことほど難しくはないはずだが、状態に不安を抱えたまま日本へ行き、結果的に来シーズン序盤の大会に出られなくなれば、今の順位さえキープできなくなるかもしれない。
五輪出場を意識するなら、当然ながら、慎重な判断が求められる。そのために大事をとるなら、日本のファンも納得してくれるはず。もちろん、ベストシナリオはZOZO選手権と五輪、両大会への出場ではあるが、果たしてどうなるか……。
あと1カ月もすればおそらく、ZOZO選手権の直前に行われる松山英樹らとのスキンズゲーム(ホールごとに賞金を取り合う大会)の出場可否も含め、我々はウッズの判断を知ることになる。