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アマゾン森林火災、くすぶる先進国への不信 現地ルポ

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ブラジルのアマゾン熱帯雨林で違法伐採や森林火災が止まらない。1月に地球温暖化に懐疑的な姿勢を示すジャイル・ボルソナロが大統領に就任してから、森林破壊のペースは加速。欧州諸国がブラジルに対する事実上の経済制裁を持ち出すなど、国際問題になっている。一方、アマゾン周辺地域に住むブラジル国民にとり、森林開拓は生活の糧を得る手段だ。突如、世界から非難されるようになった彼らの声を聞きに、アマゾンへ飛んだ。

「俺の土地で何を撮っているんだ!」。畑に向かってカメラを構えていると、ドスのきいた声が聞こえた。アマゾンの森林伐採の取材をしていると伝えると、大型ピックアップトラックの運転席から太い二の腕をのぞかせたハイムンドと名乗る男は、こう話した。「自分の土地の木を切るのに、なんで日本人に非難されないといけないんだ。ここはブラジルだ」

ブラジル北部サンタレン。かつてアマゾン川流域の通商で栄えた港湾都市は近年、大豆輸出の拠点として注目を集めている。港には穀物メジャーの米カーギルが大型サイロを備えたターミナルを構え、周辺地域から大豆を載せた小型船やトラックが集まる。

ハイムンドの畑は市街地から自動車で1時間弱の場所にある。森林に囲まれた国道から細道に入ると、森林の割合がだんだん減り、畑が多くなる。細切れにされた森林は熱帯雨林というより、雑木林と呼んだ方が適切な規模だ。畑には、近所の森林から切り出した木が雑然と並べられていた。

ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、7月に伐採されたアマゾンの森林は前年同月比で3.8倍の約2255平方キロメートルと、東京都の面積を上回る。1~7月の累計でも前年同期比約7割増となっている。

急増の背景にあるのが、1月に誕生した右派のボルソナロ政権の存在だ。経済振興のためにアマゾンの開発を推進する方針を示したことで、近年抑えられていた伐採機運が高まった。世界から注目を集める森林火災も、農牧地拡大のための野焼きが原因とみられる。

アマゾン周辺に住む人々にとり、アマゾンの森林開発は生きるための手段だった。木々を切り倒して野焼きを行い、まっさらな土地にして農業や畜産に取り組むことで、はじめて現金収入を得ることができる。伐採が非難されるようになったのは最近のことだ。足元の森林伐採面積が急増しているとはいえ、15年前の半分以下の水準にとどまる。

ボルソナロは「アマゾンはブラジルの所有物で、他国に口を出す権利はない」と繰り返してきた。環境保護の観点から欧米諸国や環境団体は強く反発するが、ハイムンドは「海外から攻撃されようと、俺はボルソナロを支持する」と断言する。自動車の後部には、昨年の大統領選で使われていた、ボルソナロのステッカーが貼られていた。

2000年代に入り新興国の雄として高成長を遂げたブラジルだが、産業は南部に集中し、北部はいまだに貧しいままだ。サンタレンが位置するパラ州の平均月収は1468レアル(約3万7000円)と、サンパウロの約半分にすぎない。その日暮らしの小規模農家にとり、「地球の酸素の20%を作り出すアマゾンは地球共有の財産だ」という先進国からの言葉は現実からかけ離れたきれい事でしかない。

畑の付近にはガスや下水道も通っておらず、れんが造りの粗末な住宅が並ぶ集落があった。零細農家のマリナ・シルバ・リマ(54)は「ボルソナロは嫌いだけど、森林だけあってどうやって暮らせばいいんだ」と話す。ボルソナロと対立する左派政党を支持する彼女にとっても、経済活動を犠牲にして環境のために森林を守れという思想は受け入れられないものだ。

森林火災の拡大で国際的な批判を浴びてもなお「植民地主義の見当違いの考え方だ」「我々にはリソースがない」と繰り返してきたボルソナロだが、欧州は自由貿易協定(FTA)合意の見直しや牛肉の禁輸など、事実上の経済制裁を示唆。ボルソナロは23日、国際世論に屈する形で違法伐採や森林火災対策として軍を派遣すると表明した。

「森林保護は我々の義務であり、違法な伐採やアマゾンを危機に陥れる犯罪行為と闘っている」。プロンプターに映る原稿を読んでいるのか、眼鏡をかけて臨んだテレビ演説でボルソナロはいらだちを隠さず、早口でまくし立てた。

欧米の主流メディアでは「極右のボルソナロ大統領の蛮行を欧州が止めた」というトーンで描かれがちな今回の騒動だが、既に経済発展を遂げた先進国が環境保護を盾に、新興国が発展する権利を奪ったという受け止め方をしたブラジル人は少なくない。SNS(交流サイト)で、今回の火災とは関係ない火事の画像を元に一方的にブラジルが批判されたことも被害者意識に拍車をかける。

森林保護を訴えるテレビ演説でボルソナロは「アマゾンには2000万人のブラジル人が住んでおり、彼らが発展できる機会を与えられなければならない」とも述べ、アマゾン開発を諦めたわけではないというメッセージを送った。たとえ森林火災がおさまっても、先進国への不信感が一部のブラジル国民の中でくすぶり続けることは間違いない。=敬称略

(ブラジル北部サンタレンで、外山尚之)

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