トランプ氏、激戦州獲得へ農家に訴求 トウモロコシ対日輸出で
【ビアリッツ(フランス南西部)=永沢毅】トランプ米大統領は26日、フランスでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)を終えて帰国の途に就く。2020年11月の大統領選を約1年2カ月後に控え、同氏が訴えた成果の一つが農産品の輸出拡大だった。それは再選を左右する激戦州の獲得戦略と密接に絡む。
「本当に大きなトウモロコシの購入だ!」。トランプ氏は25日、日米貿易交渉の基本合意にあわせて発表した日本による飼料用トウモロコシ購入についてこうツイートした。ビアリッツからの発信で意識したのは、米国内の農家の存在だった。
16年大統領選でトランプ氏が制した激戦州をみると、その理由は鮮明だ。州別のトウモロコシ生産量でトップのアイオワは大統領選ごとに勝者が移り変わる激戦州の一つで、トウモロコシ生産が活発な中西部の「コーンベルト」と呼ばれる一帯にある州の代表例だ。
アイオワは20年2月、野党・民主党が大統領候補を絞り込む党員集会が全米で最初に開かれる。世論調査で上位にあるバイデン前副大統領やウォーレン上院議員ら民主の大統領候補は今月、軒並みアイオワ入りして支持拡大を競い合っている。トランプ氏にしてみればトウモロコシの輸出拡大は自らの成果を訴え、民主の機先を制することができる好材料だ。
自動車や鉄鋼産業などが集まるラストベルト(さびた工業地帯)の一角にあるウィスコンシン、ミシガン両州もコーンベルトの一角にある。ウィスコンシンを共和党候補が制したのは1984年以来32年ぶり、ミシガンは88年以来28年ぶりだった。
アイオワやミシガンは大豆の主要な生産地でもある。中国は23日、米中貿易戦争の報復措置を発表した。9月からは米国産大豆への追加関税率が現行の25%から30%に上がる。米国の大豆農家への打撃は大きく、トランプ氏は対応策の検討を迫られている。
トランプ政権は日本との新たな貿易協定の柱となる農畜産品の関税引き下げで70億ドル(約7300億円)の市場拡大効果があるとそろばんをはじく。「農家の人たちはとても満足している」。トランプ氏は25日、記者団を前にこう成果を強調した。
農家のトランプ氏の支持率はおおむね7~8割で推移し、4割前後の平均的な支持率と比べて高水準にある。再選に向けてトランプ氏には無視できないが、同氏の焦りは別の世論調査からもうかがえる。
ミシガンやウィスコンシンでトランプ氏はバイデン氏ら民主候補と比べた場合の支持率で劣る。米政治専門サイト、リアル・クリア・ポリティクスの調査によると、トランプ氏とバイデン氏が対決すると仮定した場合、ミシガンではバイデン氏の支持率が53.0%。トランプ氏は42.7%にとどまる。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。