オリックス、打線覚醒で「いけるんちゃう?」
オリックスがスタイルの変貌を遂げつつある。開幕した頃は先発の駒がそろった投手陣が打力不足をカバーする「投のチーム」だったのが、シーズンが深まり夏場に入ると力関係が逆転、今や「打のチーム」の印象が強くなっている。(成績は8月26日現在)
8月15日、強力打線を擁する西武との試合で主役を張ったのはオリックス打線の方だった。ロメロが満塁弾を含む2本塁打、主砲の吉田正尚にも一発が出るなど20安打と打ちまくり、20-8で大勝。21日のソフトバンク戦も17安打14得点で快勝した。
決してこの2日間が"特異日"だったわけではない。8月は21試合のうち12試合で2桁安打をマークし、1試合あたりの得点は5.5。2桁安打した試合で残塁が2桁だったのは3試合のみで、出塁を得点につなげる効率の良さも光る。
駒不足、不振に苦しんだ打線
打撃陣が投手陣を引っ張る構図はシーズン当初にはなかったものだった。今季は自由契約となった金子弌大が日本ハム、フリーエージェント宣言した西勇輝には阪神に去られて苦戦が予想された中、セットアッパーから先発に転向した山本由伸が防御率1点台、山岡泰輔がプロ3年目で初めて2桁勝利に到達と新たな両輪に。ほかに榊原翼、K―鈴木、田嶋大樹らが入れ代わり立ち代わり先発ローテーションの一角を占めてきた。
一方の打線は苦戦のスタートとなった。吉田正が開幕から10試合たっても打率1割台と不振に。ロメロは右脇腹を痛めて4月中旬に戦線離脱した。新戦力のメネセスは日本ハムとの開幕3連戦こそ活躍したものの、すぐに下降線をたどって2軍へ。はては6月にドーピング規定違反で日本野球機構から1年間の出場停止処分を受け、そのまま契約解除となった。もともと駒不足な上に大砲たちが力を発揮できず、長い期間にわたってチーム打率は2割2分台と低迷した。
それが8月はチーム打率2割9分1厘と覚醒。左外腹斜筋損傷の山本、不調の田嶋らが抜けた投手陣をカバーし、8月はここまで12勝9敗と勝ち越し。今季通算では53勝59敗5分けで依然、リーグ最下位ではあるものの、3位楽天とのゲーム差は3.5と、クライマックスシリーズ(CS)進出が見えるところまで上がってきた。
打線活性化の要因の一つにロメロの復調が挙げられる。右脇腹痛で4月中旬から約1カ月間、6月下旬からも1カ月間離脱したが、7月23日に復帰すると鬱憤を一気に晴らす。4番に座った8月6日から打ちまくり、8月の月間打率は3割8分8厘。下山真二打撃コーチは「これまでは気持ちばかりが先行して、どんな球でも追いかけて打ちにいっていた。今は打つべき球だけを打つようになっている」と話す。さらに「一番は気持ちじゃないか。前半戦はけがで離脱していた期間が長く、それでいてチームは上位に食らいついていた」。不振や長期離脱が即退団につながる外国人選手ならではの危機感も、好調を後押ししているようだ。
同じ中軸を打つ吉田正の負担を減らす意味でもロメロの復調は大きい。前半戦の多くの試合は「(長距離打者が)正尚しかいなくてプレッシャーが掛かっていた。相手からしたら正尚(との勝負)だけ避けておけば、というのがあったと思う」と下山コーチは説明する。
ロメロ復調、吉田正に余裕
現在はロメロの調子が上向いたことに加えて、7月に中日から緊急で獲得したモヤの頑張りもあり「正尚に余裕ができたのが大きい」と下山コーチ。「以前は1点ずつしか取れなかったのが、今はまとめて点を取れるようになってきた」とも話す。8月6日以降は3番吉田正、4番ロメロ、5番モヤで打順を固定。中軸の並びが定まったことで「誰か1人が塁に出れば、後は3人に任せておけ、というムードが出てきた」と風岡尚幸ヘッドコーチは手応えを感じている。
今は先制されても「いけるんちゃう?という雰囲気が出てきている」とも下山コーチは話す。ロメロと同じく好調で、8月の月間打率が4割を超える吉田正は、自身の特大2ランもあって日本ハムに逆転勝ちした23日、「チームがいい戦いができているので、その流れに乗ってクリーンアップとして(走者を)かえしていけるよう頑張りたい」と抱負を語った。
24日は日本ハムの有原航平、25日は昨季まで同僚だった金子に抑えられて連敗。好投手を相手にどう食い下がるかというテーマが残っているのは確かだ。ただ、シーズン終盤に来てチームが上昇気流に乗りつつあることも事実で、この勢いのままCS進出も「いけるんちゃう?」というムードに包まれている。
(合六謙二)