貿易交渉9月決着へ 日米首脳が会談 トランプ氏「大きな取引だ」
【ビアリッツ(フランス南西部)=甲原潤之介】安倍晋三首相とトランプ米大統領は25日、主要7カ国首脳会議(G7サミット)にあわせてフランスのビアリッツで会談した。23日の閣僚協議で貿易交渉が大枠で合意したことを受け、9月下旬に決着させると確認する。トランプ氏が関心を寄せていた米国産の牛肉や豚肉の関税下げは、環太平洋経済連携協定(TPP)と同じ水準にする。
トランプ氏は会談の冒頭、日米の貿易交渉について「我々の立場は非常に近い」と指摘した。「大きな取引だ。合意できれば、この会談の後に発表できるかもしれない」と語った。首相は会談の冒頭で「いまだかつてないほど日米の絆が強い」と強調した。
貿易交渉では茂木敏充経済財政・再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が23日、米ワシントンで協議して重要品目の扱いに関して大枠で合意した。
日本政府は9月下旬の国連総会にあわせて開く日米首脳会談で決着させ、両首脳が貿易協定案に署名する段取りを描く。
新たな協定が発効した場合、トランプ氏が強い関心を示してきた日本の農産品の市場開放が進む。日本が米国産牛肉にかけている38.5%の関税は段階的に引き下げ、2033年4月に9%にする。豚肉はソーセージなどに使う低価格品の関税について、1キログラム当たり482円から最終的に50円にする。TPPと同水準になり米国はTPP参加国のオーストラリアなどと競争条件がそろう。
日本が米国に要請してきた工業品の関税引き下げでは自動車本体の関税撤廃を先送りする。今回の貿易交渉とは別に、今後も協議を続ける。米国は離脱したTPPで「自動車関税を25年で撤廃する」と合意した経緯がある。その後、トランプ氏は自動車の対日貿易赤字に不満を漏らしていた。
米国は自動車以外の工業品では幅広い分野で関税を撤廃する。日本は農産品でTPP水準までの譲歩に抑え、自動車の関税撤廃の先送りを認めた一方、他の工業品の関税撤廃を獲得する交渉になった。
米国の農家は中国との貿易摩擦の影響で、輸出が急減している。20年の米大統領選で再選を目指すトランプ氏は日本の農産品の市場開放を自身の政権運営の成果として訴える見通しだ。
9月に交渉が決着すれば、年内にも発効する見通しがたつ。日本が秋の臨時国会で協定案を承認すれば、発効に必要な国内手続きが終わる。米国は議会承認をしなくてもいい。日本の承認から1~2カ月後には協定が発効する可能性がある。
日本は米国による自動車輸入の数量規制や「通商拡大法232条」に基づく自動車への追加関税は受け入れられない立場だ。今回の貿易協定の決着は数量規制や追加関税の回避を前提とする方針だ。首相は9月下旬の決着時にトランプ氏に確約を求める見通しだ。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。