アマゾンのクラウドサービス「AWS」で大規模障害
米アマゾン・ドット・コムが運営するクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」で23日、大規模なシステム障害が発生し、影響は広範囲に広がった。同社によると、同サービスを提供している東京近郊の4群あるデータセンターのうちの1つで問題が起きたという。障害が起きた原因は特定されたとしており、アマゾンによると午後7時までにおおむね復旧したとしている。
ソフトバンクグループ傘下でスマートフォン決済を手掛けるPayPay(ペイペイ、東京・千代田)では午後1時すぎから一部の利用者が支払いやチャージ(入金)をできなくなる障害が発生した。ペイペイは午後5時30分時点で「おおむね復旧した」という。
日本ピザハット(横浜市)では午後2時すぎから宅配注文するウェブサイトが表示できない障害が発生している。ネットからピザの注文ができない状態が続いており、各店舗では電話注文だけを受け付けているという。
スターバックスコーヒージャパンは公式スマホアプリで、会員制プログラムの「スターバックス リワード」のポイント機能が使用できないトラブルが出ている。アプリ上でポイント残高が表示されず、ドリンク購入の際にポイントが付与されたかが確認できない。
また、ポイントをスターバックスコーヒーの飲料に引き換えるサービスも使用できなくなった。ポイントを使用しないアプリでの決済等には影響はないという。
ゼンショーホールディングス(HD)では、ファミリーレストラン「ココス」のアプリに午後4時ころからログインできないなどの障害が発生した。1時間弱で復旧を終えた。
ファーストリテイリング傘下のユニクロは、ネット通販サイトでのログインや購入に支障が出ており、店舗も一部作業に影響が出ている。衣料品通販サイトを運営するクルーズでは、障害の影響で自社サイト「ショップリスト」にアクセスできなくなった。現在全面的なメンテナンスを実施している状態だという。
衣料品通販サイトを運営するマガシーク(東京・千代田)では、AWS障害の影響で自社サイト「マガシーク」へのアクセスが困難になっている。DeNAはスマホゲーム「逆転オセロニア」や野球球団「横浜DeNAベイスターズ」のサイトなどで接続ができないなどの障害が発生した。午後4時半時点でベイスターズのサイトは閲覧ができるようになるなど、一部で復旧している。
ミクシィはSNS(交流サイト)「mixi」に接続できなくなった。午後5時時点でパソコン版は一部復旧しているが、スマホアプリ版では接続できない状況が続いている。スマホゲーム「モンスターストライク」などには影響は出ていないという。
グリーでは「アナザーエデン」など複数のスマホゲームでログインができないといった影響が13時ごろから出ている。
中国の動画配信サービス大手、bilibili(ビリビリ)が手掛けるスマホ向けゲーム「アズールレーン」などでもサービスが利用できない状況が報告されている。
ソフトウエアをクラウド経由で提供するSaaS(サース)企業にも影響が出ている。名刺管理サービスのSansanは法人向けの「Sansan」と個人向けの「Eight(エイト)」の両方でサービスが一部利用できない状態になっている。「徐々に復旧しているが、つながりにくい状態が続いている」(同社広報)という。
一方で大手銀行など金融機関では目立った影響は出ていない。三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクはAWSを一部使っているとみられるが、「影響はない」としている。ソニー銀行では顧客への影響はないとしているが、社内向けの情報システムで不具合が出たようだ。
証券業界では岡三オンライン証券やマネックス証券、カブドットコム証券などがAWSを一部で導入しているが目立った影響はなかった。金融取引は高い安定性が求められるため、システムの中核部分でAWSの利用を避けていたためだ。「金融機関では、二重三重にバックアップシステムを構築する」(システムエンジニア)ことが多い。
マネックスでは一部顧客向けの告知を出すための社内システムで作業が煩雑になるなどの影響が出たが株式取引に不具合はなかった。