ロヒンギャ難民、ミャンマーへの帰還拒否
【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーの少数民族ロヒンギャが迫害を受け隣国バングラデシュに逃れている問題で、両国政府が22日に計画した難民の一部の帰還は実現しなかった。ミャンマーでの安全に不安を感じ、一人も帰還を希望しなかった。一方、ニューヨークで同日記者会見した国連人権理事会の国際調査団は「ミャンマー国軍がロヒンギャを滅ぼす大量虐殺の意図」を持つと非難する報告書を公表した。
AFP通信によるとバングラデシュ南東部の難民キャンプには22日、帰還難民をミャンマーとの国境付近まで送るバス5台とトラック10台が派遣されたが、乗車を希望する難民は現れなかった。
22日の帰還対象は約3500人だった。多くの難民は「(ミャンマー政府による)国籍の付与や安全保証などがなければ戻れない」と訴える。
ミャンマー政府はイスラム教徒が多いロヒンギャを外国人として扱い、行動の自由を制限する。ミャンマーの人口は仏教徒が多数派で、民族と宗教の問題がからむ。
ミャンマーでは2017年8月、ミャンマー国軍を含む治安部隊とロヒンギャ武装集団が衝突した。ミャンマー側に追われた70万人以上のロヒンギャ難民がバングラデシュ側に流出した。
両国政府は18年11月にも帰還を試みたが、難民が応じなかった。
ミャンマー国営紙は23日「ミャンマーは(ロヒンギャの)受け入れ準備を完了したが、誰も戻ってきていない」という内容の同国外務省の声明を掲載した。声明は、当局者が22日、受け入れ施設で待機していたと説明し、帰還が実現しないのはミャンマー側の責任でないとの姿勢を強調した。
国連の国際調査団が22日公表した報告書は、ミャンマーの国軍兵士や国境警備隊員がロヒンギャの女性に「組織的な性的暴行を加えた」とも指摘した。こうした行為が「ジェノサイド(民族虐殺)の意図があったと示す」と非難し、国軍幹部を法廷で裁くよう求めた。
22日には中国の陳海駐ミャンマー大使が、同国のミン・アウン・フライン国軍最高司令官とネピドーで会い、ミャンマー政府への支持を改めて表明した。ミャンマー政府高官の一人は「22日の帰還計画も中国政府の仲介で決まった」と話す。