日本電産・永守氏「大学の偏差値・ブランド主義を打破」
日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は23日、京都市内で講演し、日本の大学教育について「偏差値、ブランド主義がひずみになっており、打破したい」と訴えた。大学教育が抱える課題として実践的な語学教育、専門教育、人間教育の3点の欠如を指摘。自身が運営法人の理事長を務める京都先端科学大学で、こうした考え方を徹底する姿勢を強調した。
同日開かれた「全国高等学校PTA連合会大会京都大会」で講演した。永守氏は2018年3月、京都先端科学大学の前身の京都学園大学の運営法人理事長に就任。19年4月から大学名を現名称に変更した。
永守氏は同大学を「まず第一目標は、世界大学ランキング199位に入ること」と強調。将来的にランキングで東京大学、京都大学を超える大学にする考えを示した。自身が一代で日本電産を巨大企業に成長させたエピソードを交えながら「ブランド主義とかは関係なく、やればできる」と自信を見せた。
大学教育の現状については「英語がしゃべれず、専門科目もできず、礼儀作法を知らない人をどんどん出している」と批判。企業側も「大学のブランドで採用するしかない。礼儀作法から教えないといけなくなっている」と述べた。
一方で「日本電産で一流大学を出た人とそれ以外の大学を出た人を比べても、入社後10年、20年をみたらブランドも偏差値も何も関係ない」とも指摘。こうした問題意識から大学の運営法人理事長に就任したと明かした。
実際、京都先端科学大学のキャンパスではすでに永守流の改革が始まっている。英語教育はビジネス英会話で定評のあるベルリッツ・ジャパン(東京・港)と連携、プロの教員が授業を行う。カリキュラム全体の22%を英語学習が占める。
日本電産は同大学からのインターンシップを積極的に受け入れる。今年度は8人の学生を同社の海外5拠点で2週間のインターンとして受け入れる予定だ。永守氏は将来的に、日本電産の海外43拠点で同大学の学生を最長1年間インターンとして受け入れる考えを示した。
20年4月には工学部を新設予定だ。教員は国際公募で集めた。学生にはモーター工学やロボット工学などの先端技術を学ばせる。専門教育はすべて英語で開講する予定で、ビジネスの場で通じる実践的な英語力を養う。
従来の卒業研究に代わる「キャップストーン」と呼ぶプログラムも採用。ゼミ担当の教員ではなく、全国の企業から直面している課題を提示してもらい、学生がその解決に取り組む。米国の一部の大学で取り入れられている仕組みで、日本の工学部では初という。
講演後の記者会見で永守氏は「(偏差値やブランド志向の社会全体に)風穴を開ける。一般の人にはできないから、自分が成功を見せないといけない」と意気込んだ。
(京都支社 福冨隼太郎)
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