カメラで新幹線車内を集中監視 JR東海、五輪に備え
JR東海は2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、東海道新幹線のセキュリティー対策を強化する。駅構内や車内の防犯カメラを外部の指令所や管理センターとつなぎ、カメラの画像をリアルタイムで監視できるようにする。東京五輪で多くの訪日外国人(インバウンド)の利用が見込めるなか、万が一の事態の発生も想定して万全の体制を整える。
新たに東京駅近くに管理センターを設け、全17駅の防犯カメラの画像を共有する。これまでは駅ごとに管理していた。24時間体制で状況を監視し、非常時には警察に画像を送信する仕組みも整える。20年5月に運用を開始する予定だ。
20年3月には、新幹線の車内の防犯カメラの映像を指令所と共有できるようにする。指令所の指令員が車内放送で避難を呼びかけたり、状況の説明を行ったりできるようにもする。初動対応の迅速化や利用客の混乱の回避につなげる。
防犯カメラの設置を巡っては、15年6月に走行中の東海道新幹線の車内で男が焼身自殺した事件をきっかけに各社で導入が進んだ。JR東海は17年末に東海道新幹線の大半の車両でのカメラの設置を完了した。だが、新幹線の外部から映像を拾うことはできず、リアルタイムで状況を把握することは難しかった。
JR東海の幹部は「新幹線は世界で一番安全な乗り物だ」と強調する。ただ、18年6月には乗客の男女3人が殺傷される事件が起きるなど、不測の事態が発生する可能性は捨てきれない。20年の東京五輪では、多くの外国人観光客が東京から大阪、京都、九州などに移動することから、東海道新幹線の利用客の増加も予想される。世界中が盛り上がる一大イベントを前に、プライバシーに配慮しつつ厳重な安全対策を講じていく考えだ。
一方、手荷物検査の導入は否定している。金子慎社長は「乗客の利便性を損なうため」と説明する。検査スペースの確保や検査待ちの行列・混雑の回避が難しいとの指摘がある。
(林咲希)