セキュリティー対策のユニコーン勃興 全13社の横顔
CBインサイツのデータベースを活用し、足元の評価額が10億ドル以上のサイバーセキュリティー分野の未公開企業13社を紹介する。
サイバーセキュリティー分野の未公開企業で最も評価額が高いのは、セキュリティーソフト開発の米タニウム(Tanium)だ。18年10月に実施した資金調達(調達額2億ドル)では、企業価値は最大65億ドルと評価された。
一方、新たにユニコーンの仲間入りを果たしたのは、セキュリティートレーニングを手がける米ノウ・ビフォー(KnowBe4)だ。19年6月に3億ドルを調達し、評価額が10億ドルに達した。
以下は足元の評価額が10億ドル以上に達しているサイバーセキュリティー関連のスタートアップ13社の横顔だ。評価額の高い順に並べた。
世界のサイバーセキュリティー分野のユニコーン
1.タニウム(Tanium)
▽資金調達総額(公表ベース、以下同):7億7030万ドル
▽ユニコーン到達日:15年3月31日
▽現在の評価額:66億ドル
▽主な投資家:米アンドリーセン・ホロウィッツ、ベイリー・ギフォード(スコットランド)、米TPGグロース
エンドポイント(端末)の管理とセキュリティーのためのプラットフォームを提供する。顧客企業の全てのネット接続機器を守る。
2.奇安信(Qi An Xin)
▽資金調達総額:8億6430万ドル
▽ユニコーン到達日:18年11月29日
▽現在の評価額:25億ドル
▽主な投資家:沸点資本(中国)、中国電子信息産業集団(CEC)、奇虎360(中国)
官公庁や民間企業などにビッグデータ、コンテンツ、エンドポイント、ペリメーター(境界)のセキュリティーを提供する。サイバー攻撃の予兆を把握し、顧客企業に通知する「脅威インテリジェンス」サービスとIT(情報技術)の融合により、顧客のネットワークを守る。
3.クラウドフレア(Cloudflare)
▽資金調達総額:3億3210万ドル
▽ユニコーン到達日:15年9月22日
▽現在の評価額:18億ドル
▽主な投資家:百度(バイドゥ、中国)、米キャピタルG、米ユニオン・スクエア・ベンチャーズ
ウェブサイトからクラウド上でソフトウエアを提供する「SaaS」に至るまで、様々なオンライン資産の高速化と保護を手がける。世界に広がるクラウドフレアのネットワークを通じて顧客のウェブトラフィック(データ)を送ることにより、パフォーマンスやページの読み込み時間を最適化する一方、様々なサイバー攻撃から守る。
4.カセヤ(Kaseya)
▽資金調達総額:5億5000万ドル
▽ユニコーン到達日:19年3月27日
▽現在の評価額:18億ドル
▽主な投資家:米インサイトパートナーズ、TPGオルタナティブ・アンド・リニューアブル・テクノロジーズ(TPG ART)
顧客がITを管理し、攻撃から守り、バックアップできるようにする。カセヤのプラットフォームはサービスプロバイダーやITチーム向けで、モニタリングや管理、セキュリティー、事業継続性を確保できるようにする。
5.ダークトレース(Darktrace)
▽資金調達総額:2億3230万ドル
▽ユニコーン到達日:18年5月15日
▽現在の評価額:17億ドル
▽主な投資家:インサイトパートナーズ、ソフトバンクグループ、サムスン・ベンチャーズ(韓国)
人工知能(AI)を使って組織の異常行動を検知し、サイバー攻撃からのリスクを管理する。悪意のある第三者が既にネットワークに侵入している場合には、顧客が自社のインフラを守れるよう支援する。
6.ルックアウト(Lookout)
▽資金調達総額:2億8100万ドル
▽ユニコーン到達日:14年8月13日
▽現在の評価額:13億ドル
▽主な投資家:米グレイロック・パートナーズ、米インキュテル、米クアルコム・ベンチャーズ
アプリやデバイス、ネットワークレベルの脅威からモバイル機器を守る。ユーザーをウイルスから守り、データをバックアップ・回復し、紛失・盗難されたスマートフォンを見つけ出す。
7.第四范式(4Paradigm)
▽資金調達総額:1億4500万ドル
▽ユニコーン到達日:18年12月19日
▽現在の評価額:12億ドル
▽主な投資家:中国銀行、セコイア・キャピタル・チャイナ
顧客企業が不正行為を検知し、効率化し、リスクを削減し、販促ができるよう支援する。同社のプラットフォームではAIを活用し、顧客のオンラインでの習慣を分析する。主な対象は金融サービス企業。
8.イルミオ(Illumio)
▽資金調達総額:3億3220万ドル
▽ユニコーン到達日:17年6月7日
▽現在の評価額:10億ドル
▽主な投資家:米アクセル、アンドリーセン・ホロウィッツ、米ブラックロック
ネットワークの単位を細かく分割する「マイクロセグメンテーション」やリアルタイムでのアプリケーション依存関係図の作製などでサイバー脅威の広がりを防ぎ、企業が抱えるデータセンターやクラウドのセキュリティーの問題の克服を支援する。
9.同盾科技(Tongdun Technologies)
▽資金調達総額:2億3640万ドル
▽ユニコーン到達日:17年10月10日
▽現在の評価額:10億ドル
▽主な投資家:米IDGキャピタル、米GGVキャピタル、天図資本(中国)
金融サービスなどの業界を対象に、盗難や不正を防ぐリスク管理サービスを提供する。ビッグデータやAI、クラウドコンピューティングを駆使し、不正防止の判断を下すプラットフォームの設立をめざしている。
10.ネットスコープ(Netskope)
▽資金調達総額:4億10万ドル
▽ユニコーン到達日:18年11月13日
▽現在の評価額:10億ドル
▽主な投資家:アクセル、米アイコニック・キャピタル、米ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ
クラウドアプリケーションやクラウドインフラのデータを脅威から守るプラットフォームを提供する。ITを活用してどんなデバイスでもリアルタイムで利用を管理し、繊細なデータを守り、コンプライアンスを確保できるようにする。
11.オースゼロ(Auth0)
▽資金調達総額:2億1220万ドル
▽ユニコーン到達日:19年5月20日
▽現在の評価額:10億ドル
▽主な投資家:米ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ、テルストラ・ベンチャーズ(オーストラリア)、米K9ベンチャーズ
ウェブ、モバイル、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」、内部アプリケーションで従業員のIDを認証できる安全なログインシステムを企業に提供する。
12.ノウ・ビフォー(KnowBe4)
▽資金調達総額:3億9320万ドル
▽ユニコーン到達日:19年6月12日
▽現在の評価額:10億ドル
▽主な投資家:米エレファント・ベンチャー・キャピタル、米ゴールドマン・サックス、米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)
模擬フィッシング(詐欺)メールを送信できるツールを使ってユーザーが危険信号を認識できるよう訓練することで、ユーザーをだまして被害を与える攻撃「ソーシャルエンジニアリング」の手口に企業が対応できるようにする。
13.ドゥルーバ(Druva)
▽資金調達総額:3億2800万ドル
▽ユニコーン到達日:19年6月20日
▽現在の評価額:10億ドル
▽主な投資家:米デル・テクノロジーズ・キャピタル、米ネクサス・ベンチャー・パートナーズ、米セコイア
クラウドのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)上に構築されたシステムにより、クラウドデータを管理・保護するSaaS企業。ドゥルーバのテクノロジーを活用することで、顧客はクラウドデータの処理コストを削減できる一方、クラウドを使ったディザスターリカバリー(災害復旧)によるデータへの適切なアクセスや、モビリティーの確保などが可能になる。