米ゴールドマン、「アジアの虎」の成長率見通し引き下げ
【ニューヨーク=伴百江】米ゴールドマン・サックスは「アジアの虎」と呼ばれる香港、韓国、シンガポール、台湾の4カ国・地域の経済成長率見通しを引き下げた。この4カ国・地域はアジア太平洋諸国の中でも特に貿易を通じて世界経済拡大の恩恵を受けてきた。だが、その立場が裏目に出て、貿易摩擦の深刻化を受けた世界景気の減速が他国に比べて大きな打撃になっているという。
経済成長率見通しの引き下げで、最も大きい修正となったのが香港。2019年の前年比の成長率を当初の1.5%から0.2%へ引き下げた。次いでシンガポールは同1.1%から0.4%に下方修正。韓国と台湾については、それぞれ2.2%から1.9%へ、2.4%から2.3%へ引き下げた。
香港は「逃亡犯条例」改正案に絡む大規模デモが深刻化し、観光業などの収益に打撃を与えることなどが成長率の押し下げ要因とみる。
米中貿易戦争の様相を呈する貿易摩擦深刻化を受け、中国からの生産移管という恩恵を受ける地域もある。しかし、ゴールドマンによると、恩恵はベトナムなど中国と陸続きの東南アジア諸国に向かう可能性が強く、アジアの虎の4カ国・地域への恩恵は限定的とみている。
ゴールドマンでは景気減速に対応してシンガポールと韓国が利下げするほか、香港と台湾は政策当局が景気刺激策を本格導入すると見込んでいる。
アジアの虎は、香港、韓国、シンガポール、台湾の4カ国・地域が1980年代以降、貿易を中心に急激な経済成長を遂げたことから名付けられた。