お言葉継承、にじむ思い 戦後生まれの天皇陛下
15日の全国戦没者追悼式での天皇陛下のお言葉は、平成の文言や内容をおおむね踏襲しつつ、上皇さまの平和への祈りを戦後生まれの世代として引き継いでいく意思がうかがえるものだった。
「かけがえのない命」「深い悲しみ」「深い反省」など、陛下のお言葉の文言の多くは上皇さまが使われてきたもの。「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」という部分は、平成最後となった2018年の追悼式で上皇さまが述べられた表現と全く同じだった。
「お言葉に連続性を持たせることで、新たな象徴として平和な時代を引き続き守っていくとの陛下の強い意志を感じる」。象徴天皇制に詳しい名古屋大の河西秀哉准教授は指摘する。
一方、細かい表現をみると、上皇さまが「深い反省とともに」とした部分が「深い反省の上に立って」とされるなど異なる部分もあった。
ノンフィクション作家の保阪正康さんは「戦争を同時代で体験した上皇さまに対し、戦争の歴史を教訓として受け止め、次世代へ継承しようという陛下の思いが、わずかなお言葉の変化ににじみ出ている」とみる。
ある宮内庁幹部は「平成期も細かな表現の変化は毎年あった。陛下も、これから活動を重ねながら文言や表現を変えていかれることがあるのではないか」と話している。