上場企業、純利益15%減 4~6月最終集計
3年ぶり減益 電機、自動車不振
上場企業の2019年4~6月期決算がほぼ出そろい、純利益は前年同期比で15%減と3年ぶりの減益となった。米中貿易戦争の影響が電気機器や自動車・部品などを直撃し、製造業に限ると45%減った。通信や電力など非製造業の伸び(38%増)では補えなかった。製造業の不振により、20年3月期通期の純利益も前期比3%減を見込んでいる。
日本経済新聞社が15日までに発表を終えた主要1584社(金融・新興市場などを除く)を対象に集計した。売上高は1%増の142兆円。売上高純利益率は5.4%と、前年同期から約1ポイント悪化した。32業種のうち7割にあたる22業種が減益で、特に製造業は17業種のうち「パルプ・紙」と「その他製造」を除く15業種で減った。全体の社数ベースでも56%が減益だった。
業績低迷の最大の理由は米中対立をきっかけとした世界経済の減速だ。業種別で最も影響が大きかったのが電気機器で、74%の減益となった。
東京エレクトロンはスマートフォンやデータセンターの需要鈍化が顧客の半導体メーカーの投資抑制につながり、43%の減益だった。河合利樹社長は「(顧客の設備投資意欲は)今が底に近い状態」と話す。セイコーエプソンも中国で企業向けにプリンターがふるわず、インクカートリッジの販売も減った。
東芝は前年同期の半導体メモリー事業の売却益がなくなったうえ、米液化天然ガス(LNG)事業で売却損を計上し、1402億円の最終赤字に陥った。ソニーもスマホ向けの半導体が好調で営業増益を確保した一方、前年同期に株式売却益を計上した反動で純利益は3割減った。
米中対立の影響は自動車・部品や化学などにも広がった。日産自動車は主力市場の米国での販売減に加えて原材料高や円高が重なり、94%の減益となった。ホンダも米国で四輪車の販売がふるわなかった。
三菱ケミカルホールディングスは中国の家電向け需要が低調で、アクリル樹脂原料の採算が悪化した。「買い控えで販売価格は前年同期より3割下がった」(伊達英文・最高財務責任者)。JXTGホールディングスは石油化学製品事業の低迷や銅価格下落の影響を受けた。
一方、非製造業は15業種中8業種が増益を確保した。大和ハウス工業は都市部の賃貸住宅で売却益を計上し、訪日客の増加を追い風にホテルの建設受注も好調だった。商船三井などの海運はコンテナ船事業のテコ入れや不採算路線の減便を通じ、業種として前年同期の赤字から、黒字へ転換した。
業種別で増益幅が最も大きかったのは通信だ。ソフトバンクグループが中国アリババ集団の株式の一部売却で、営業外で1兆円超の利益を計上した。続いて大きかった電力は燃料価格が下がるなか、電気料金に反映されるまでに時間差が生じて利益を押し上げた。
非製造業では商社の落ち込みが目立った。住友商事はニッケルや銀・亜鉛・鉛といった事業が苦戦した。「資源価格が期初の想定に対し軟調に推移している」(高畑恒一副社長)という。
米中対立はトランプ政権による対中制裁関税「第4弾」を巡る議論が関心を集める。円相場も直近で一時1ドル=105円台まで上昇し、上場企業の想定為替レートの平均(109円前後)よりも円高に傾きつつある。
今のところ20年3月期通期の純利益見通しは前期比3%減。SMBC日興証券の伊藤桂一氏は「企業業績は前年度の下期から悪化に転じており、通期でみた場合は4~6月期よりも減益率が縮小しやすい」と分析する。
ただ企業幹部の間では7~9月期以降の事業環境も「慎重にみている」(東芝の平田政善・最高財務責任者)と早期の回復を見込む向きは少ない。世界景気の不透明感が業績を下押しする懸念は払拭されていない。
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