戦没者追悼式、天皇陛下「深い反省」を踏襲 令和最初
74回目の「終戦の日」を迎えた15日、政府主催の全国戦没者追悼式が日本武道館(東京・千代田)で開かれた。天皇陛下が皇后さまとともに即位後初めて出席し「世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」とお言葉を述べられた。過去への「深い反省」など上皇さまの表現をほぼ踏襲し、戦後生まれの象徴として戦没者を追悼された。
午前11時50分すぎに始まった式典には安倍晋三首相をはじめ、三権の長や各都道府県から招かれた遺族代表ら約6千200人が参列した。台風10号の影響による欠席が相次いだという。追悼の対象は先の大戦で犠牲になった軍人・軍属230万人と民間人80万人の計310万人。
国歌斉唱の後、安倍首相が式辞で「私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであることを決して忘れない」と哀悼の意を表明した。「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この誓いは昭和、平成、そして令和の時代でも決して変わることはない」とも強調した。
この後、参列者は正午から1分間の黙とう。陛下が白木の標柱の前に進み「さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします」とゆっくりとした口調で述べられた。
お言葉の中で、陛下は戦後から築き上げられた「人々のたゆみない努力」と「苦難に満ちた国民の歩み」に触れたうえで、先の大戦に対する「深い反省」にも言及された。ほとんどの文言、表現は平成期に上皇さまが述べられた内容を踏まえており、象徴として不戦を誓い、平和を希求する路線を継承している。
遺族代表として、東部ニューギニアで父を亡くした横浜市の森本浩吉さん(77)が「先の大戦を知らぬ世代も多く記憶も風化しつつあるが、この日を全ての国民が胸に深く刻み、英霊に感謝する日となることを望む」などと追悼の辞を述べた。
日本の総人口に占める戦後生まれの割合は8割を超え、戦没者遺族の世代交代も進んでいる。厚生労働省によると、戦没者追悼式に参列予定の遺族は5391人。このうち、昭和に過半を占めた「戦没者の妻」は5人まで減り、父母は2010年の式典を最後に、参列が途絶えている。
一方で、戦没者の子供が51%と半数を上回り、戦後生まれの遺族の割合は初めて3割を超えた。世代交代により戦争の記憶が遠ざかるなか、次世代へどう引き継いでいくかが課題となっている。参列予定者のうち、最高齢は夫が沖縄戦で戦死した内田ハルさん(97)=東京都八王子市。最年少は4歳だった。
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天皇陛下おことば全文
本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来74年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。