福島第1処理水 タンク増設の可否検討 経産省小委
経済産業省は9日、東京電力福島第1原子力発電所で出た汚染水を浄化した後の処理水に関する小委員会を約7カ月ぶりに開いた。東電が2022年夏に、敷地内のタンクが処理水で満杯になるとの試算を示した。今後、タンク増設の可否などを検討していく。
福島第1原発ではタンク約960基に115万トンの処理水を保管している。20年末までに計137万トン分のタンクを確保できる予定だが、汚染水は1日170トン(18年度平均)発生している。東電は3年で満杯になると説明した。
委員からは「本当に敷地は余っていないのか」「敷地を拡充すべきだ」といった意見が出た。一方で「早く処分方法を決めるべきだ」との声も出た。
原発敷地内では今後の廃炉作業に備えた場所の確保が急務となっている。建屋内のプールにある使用済み核燃料や原子炉内で溶け落ちた溶融燃料(デブリ)の取り出しが本格化するためだ。
東電はデブリや使用済み燃料の保管のために約8万平方メートルの土地が追加で必要になるとの見通しを示した。これ以外にもデブリの取り出しの準備施設の建設が必要になるという。今後、タンクの配置を効率化して土地の確保を図るが、すべての施設を建設するには不十分という。
委員からは「廃炉作業の進行とうまく共存していく形で処理水の貯蔵を続けるにはどうしたらよいか考えるべきだ」との声も出た。
経産省は13年から処理水の処分に関する議論を有識者会議で続けているが、結論は出せていない。処理水は薄めて海に流しても安全上問題ないとされるが、地元を中心に漁業などへの風評被害を懸念しているためだ。
18年に経産省が福島県などで開いた公聴会では、放出に反対する声が相次いだ。小委は妙案がない中、18年12月以降、開催できない状態が続いた。
11年の東日本大震災の影響で炉心溶融(メルトダウン)事故を起こした福島第1原発には雨水や地下水などが流入し、放射性物質に汚染された水が絶えず発生している。東電は専用装置でセシウムなどの主要な放射性物質を取り除いたうえで、タンクで保管してきた。