東京五輪ポスター、浦沢直樹・蜷川実花らが制作
2020年東京五輪・パラ五輪組織委員会は大会の公式ポスターを制作するアーティストを発表した。五輪をテーマに制作するのは漫画家の浦沢直樹、写真家のホンマタカシ、美術家の大竹伸朗、鴻池朋子ら11人。パラ五輪は、漫画家の荒木飛呂彦、写真家の蜷川実花、画家の山口晃ら8人が手掛ける。シンガポールのテセウス・チャンら海外の作家も選ばれた。
この顔ぶれは日本の現代美術の多様性とフラット化する現状を映している。その点で興味深いのは漫画家が選ばれたことだろう。「20世紀少年」「PLUTO」などで知られる浦沢と、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズを連載中の荒木は、美術館で展覧会も開いているトップランナーだ。国内外に東京大会のイメージを強く打ち出すため、認知度の高いサブカルチャーの人気作家を起用したのはうなずける。一方の美術家も、第一線で活躍する精鋭を手堅くそろえた印象。「美術」の枠にとらわれない多彩な活動を展開する作家が多く、ハイブリッドな感性がどんな作品を生み出すか、注目したい。
1964年の東京大会では、公式ポスターはグラフィックデザイナーの亀倉雄策(1915~97年)が手掛けた。日の丸の下に金の五輪エンブレムと「TOKYO 1964」の文字をあしらった構図や、短距離選手のスタートの一瞬を真横からとらえた写真などは、日本のグラフィックデザインの金字塔を打ち立てたといっても過言ではない。シンプルで力強いイメージは、日本が戦後復興を成し遂げたことを内外に示す鮮烈なアイコンとなった。
今回アーティストらに委嘱した作品は年内に発表され、美術館での展示のほか、ライセンス商品としての販売も予定されている。のちに語り継がれるような、斬新な五輪・パラ五輪のイメージに期待したい。
(赤塚佳彦)