「黄金世代」が大仕事 渋野や勝ら女子ゴルフけん引
女子ゴルフのメジャー今季最終戦、全英女子オープンで日本の渋野日向子が優勝。1977年の樋口久子以来42年ぶりのメジャー制覇を20歳の若さで果たした。98年11月生まれの渋野と同じ学年、98年度生まれの「黄金世代」が日米両ツアーを通じて18勝目の大金星。縮小一途の国内ゴルフ市場に活気をもたらすことはできるだろうか。
日米24勝を一人で挙げて、一昨年引退した宮里藍の影響を抜きに黄金世代の誕生は語れない。宮里が18歳の高3のアマチュアでプロツアーを制し、プロ転向したのが2003年秋。「藍ちゃんブーム」に触発され、小学生になったばかりの子どもがジュニアゴルファーの道へと足を踏み入れた。98年からメジャー優勝を重ねた朴セリの背中を追って強豪が続々と育った現在世界最強の韓国と状況はよく似ている。
そこへ14年に当時高1のアマチュア、勝みなみが15歳でツアー初優勝をなし遂げ、同学年のジュニアに火をつけた。畑岡奈紗は16年日本女子オープンで初優勝すると、プロとしての主戦場は米ツアーに置き、昨年の全米女子プロでプレーオフに敗れ2位となるなどこの世代のメジャー挑戦の先陣を切っていた。
競争は激烈だ。女子のプロテストの合格ラインは黄金世代が受験を始めた17年に2アンダー、18年は8アンダーへと「急騰」。ジュニア時代は無名で、ソフトボールと二刀流を続けていた変わり種の渋野も、18年にプロの関門をくぐり抜けた。合格同期の河本結、原英莉花、1学年下の稲見萌寧がプロルーキーイヤーの今季そろって初優勝を挙げていることからもレベルの高さがわかる。
「日本のLPGAツアーからいきなりメジャー優勝。ツアー強化が実り、二重の喜び」と、日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長。渋野の今季国内2勝、そして全英女子はすべて4日間大会だ。東京五輪決定後、選手強化を目標に掲げ、4日間大会を増やしてきた施策が生きた。
宮里、男子の石川遼の登場で増え続けた日本ゴルフ協会のジュニア登録者数はピークの約1万5千人から減り始め、16年は1万1千人でそのうち女子が4200人。女子人気は根強いとはいえ、少子化の波はすでに押し寄せ、スターを輩出するジュニアのパワーダウンは避けられない。東京五輪の成功と、その先の日本のゴルフ界の未来図をどう描くのか。米ツアーを経由せず、日本から直接メジャー優勝者を出した今がまさに備えの時だろう。
(編集委員 串田孝義)