関西の最低賃金上げ幅最大、大阪964円 京都909円
関西4府県の各地方最低賃金審議会は5日、2019年度の最低賃金(時給)を答申し、引き上げ幅は大阪と兵庫が28円、京都と和歌山が27円となった。それぞれ過去最大の上げ幅で、兵庫と和歌山は中央審議会が示した目安を1円上回った。滋賀は議論がまとまらず、同日予定していた答申を7日に延期した(「滋賀県の最低賃金 27円引き上げ答申」参照)。4府県の最低賃金は10月1日に適用予定だ。
大阪は964円となる。5年連続で20円以上となり、この間の上げ幅は126円(15%)に上る。審議会の服部良子会長(大阪経済法科大学教授)は「労働者側の代表からは非正規労働者の賃金水準の低さ、使用者側からは中小企業の負担感の大きさが指摘され、審議は簡単ではなかった」と議論の紛糾をにじませた。
京都は909円と、900円台に乗せた。審議では使用者側から「府北部では廃業に追い込まれる中小も出ている現状を認識してほしい。下請けの価格転嫁の後押しや使い勝手のいい助成金制度などが必要」との指摘があった。
兵庫は899円。昨年度に続いて目安を上回った。審議会の梅野巨利会長(大阪商業大学教授)は「中小から『限界』と悲鳴が聞こえているとの意見もあり、目安プラス1円はギリギリ妥当な金額だ。労働者側から大阪に少しでも近づきたいとの声があったが、近隣府県との差をこの場だけでは解決できない」と語った。
同様に目安を上回った和歌山。審議会の冨山信彦会長(弁護士)は「大阪などとの賃金格差をなるべく抑えたいという意向が反映された」という。
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「昨年度後半から企業収益は悪化し、消費増税の悪影響が中小企業に大きく及ぶことを考えれば、10月からの大幅な引き上げは最悪のタイミングだ」と指摘する。パートやアルバイトは扶養者控除などを想定して働くケースが多く「就業時間を減らす動きが出ると、人手不足にも拍車がかかる懸念がある」とみる。
これまで省力化などに取り組んだ企業は多い。東大阪市のバネを手がける企業の社長は「残業削減、休日取得推進など『働き方改革』を追い風にして人件費抑制を進めるしかない」と話す。