悩み簡単解決 振るだけで寄るアプローチ術(下)
吉本 これから先は番外編として役に立つアプローチを3つ、紹介します。最初は私が「ゴールドエイト」「ゴールドナイン」と呼んでいるグリーン周りからのアプローチです。使うクラブは8番と9番アイアンで、ミスがまったく出ないというのが特徴です。
──それはすごくよいですね。
吉本 アドレスのポイントです。(1)ヘッドのヒールを浮かしてトウ側でボールに構えます。結果としてボール近くに構えることになります。(2)パターと同じグリップ、アドレスで構えます。つまり、両肘が曲がっても構いません。
──クラブをつり気味にして構えるのですね。
吉本 そうです。次に打ち方です。(1)現在のパターと同じフォームで打ちます。下半身と首の付け根を固定します。腕だけで打つイメージです。結果的にヘッドの芯を外して打つことになります。
──「8コロ」「9コロ」ですね。さすが、アメリカでゴルフをしてきた吉本プロだけにそうは言いません。「ゴールドエイト」「ゴールドナイン」と呼ぶほうが格好いい。おじさんゴルフのイメージが払拭されます。
吉本 そうですか? では、打ってみましょう。
──3球すべてピンに寄ってOKです。
吉本 パターの延長のイメージなので打ちやすく、距離も合わせやすいのです。また、芯を外すので、ほどよく勢いがなくなり、強く打ち過ぎることがなく、グリーン周りからの距離が合わせやすいです。さらに打ち出し時に少しボールが浮くので、パターで打つよりもカラーやフェアウエーの芝に影響されません。
──私もやってみましたが、実にうまく転がせます。ヒールを浮かすので、トップ目に打つことになり、ザックリがまったくありません。トップ目でも芯で打たないので飛び過ぎない。安心できるアプローチです。アマチュアにはとってもいいですね。
吉本 次は番外編2つめの「クリクリロブショット」です。バンカー越えや池越えなど高い球が必要なときのショットです。使うクラブは54~60度のサンドウエッジ(SW)か、さらにロフトのあるロブウエッジです。
──なぜ、「クリクリ」なのですか?
吉本 それは打つ前にウエッジのグリップの先端を回して最も落ち着く開き具合を見つけるからです。人さし指と親指でグリップエンドをつまむように持ち、地面につけたヘッドをクリクリと回すと、一番落ち着くフェースの向きがあることがわかります。つまりそこが、そのウエッジの自然なフェース面の開き具合なのです。一緒にやってみましょう。
──クリクリと回していくうちに、開きがピタッと落ち着く角度がありますね。
吉本 それがそのウエッジ自体の自然な開きなので、それに合わせてアドレスすれば、自然とうまく打ててしまうというわけです。
──クラブ自体が開きたい角度というわけですね。
吉本 そうです。ですから、(1)クリクリとヘッドを回して。(2)その開きの角度でグリップして、そのまま少しオープンスタンスに構えます。フェース面はピンよりも右、スタンス向きはピンよりも左にします。(3)そのとき、ボールは体の正面です。腰は自然と低くなると思います。
──かなりのオープンフェースであり、少しといっても結構なオープンスタンスになりますね。シャフトが寝るので腰も低くなるのですね。
吉本 そうです。こうして構えができたら、打ち方です。(1)スタンス方向にスイングします。(2)スイング中はフェース面を開いた状態で維持します。(3)ボールの下をくぐらせるイメージで打ちます。(4)ダウンスイングでは適度に加速させます。(5)打った後もフェース面は閉じません。(6)スイング中は下半身を固定させて腰の高さを変えないようにします。
──スタンス向きということはアウトサイドインに振るわけですね、フェース面を閉じないということはリストターンをしないのですね。
吉本 その通りです。では打ってみます。
──ボールはかなり高く上がり、スピンがかかっているので落ちてからしっかりと止まりますね。ピンに直接落としていける感じで、3球すべて1メートル以内に寄りました。すごいです。
吉本 この「クリクリロブショット」なら、ラフからでもスピンがかかります。でもベアグラウンドではソールのバンスでヘッドがはじかれてしまうので、クリーンヒットできないため、この打法は使えません。では、やってみてもらえますか?
──はい。……やってみたら、驚いたことにロブショットがうまく打ててしまいました。最初はそんなロブなど打てないと思っていたのですが、クリクリを行って、自分のサンドウエッジが持つ自然な開きになっているからでしょうか。簡単に振り抜けて、高い球が打てる。ピンの右2メートルでしたが、スタンス向きを調節したら、ピン方向に飛んで1パット圏内です。
吉本 素晴らしいロブショットです。これならバンカー越えにピンが立っていても寄せられますね。
──はい。ありがとうございます。
吉本 最後は番外編3つめ、「赤道ショット」です。これはグリーンオーバーして斜面を駆け上り、グリーンへは極度な左足下がりのライになってしまったという状況です。しかも芝が生えそろっていない、ベアグラウンドで使える打ち方です。クラブはピッチング、アプローチ、サンドのどのウエッジでもOKです。
──極端な左足下がりになることって結構ありますね。このとき、危機感を抱くことなく打って、大きなダフリやトップをやって、グリーンに届かなかったり、逆に向こう側へグリーンオーバーしたりして大たたきになることもありますね。
吉本 まったくその通りで、まずこの状況がかなり難しいライであることを認識してください。つまり普通にはうまく打てない。そこで「赤道ショット」なわけです。
──ぜひ教えてください。
吉本 まずアドレスです。(1)通常のアプローチのグリップで握ります。(2)アドレスはパターと同じイメージで、(3)軸を左に移動させて左足に体重をかけます。(4)上半身の軸は左に傾け過ぎないこと。(5)ヘッドの刃の部分をボールの赤道に合わせます。ヘッドを地面から浮かせるわけで、ここが大事なポイントですね。
──つまり、ヘッドの刃でボールの赤道を打とうとするのが「赤道ショット」なのですね。
吉本 そうです。そして、打ち方です。(1)基本的にパターと同じイメージです。(2)スイング中、首の付け根と下半身を固定し、(3)腕だけで打つイメージです。(4)ウエッジの刃を使ってインパクトでボールの赤道部分を打ちます。
赤道を打つことでバックスピンがかかり過ぎず、適度なオーバースピンがかかります。地面は打たず、ボールの赤道を打つので、左足下がりに多いダフリやチャックリが出ません。適度なオーバースピンで転がってくれるので、ラフや芝が長い場合はより強めに打つ必要があります。やってみますね。
──かなりの左足下がりなので本当にうまくいくのかと思いましたが、3球ともピンに寄っていきました。
吉本 結構うまくいきましたね。とはいえ、このライからはプロでもそうは寄るものではありません。しかし、この「赤道ショット」なら大きなミスがなくグリーンには乗ってくれます。ではやっていただけますか?
──やってはみましたが、いずれもボールの赤道をうまく打てず、寄せられませんでした。
吉本 もっとパターのように構えて、腕だけでスイングすればうまく打てたと思います。
──何かウエッジの刃で打つことに慣れていないというか、それなら「ゴールドエイト」のほうがいいです。ヒールを浮かしてパターのように打つやり方です。やってみますね。
吉本 そのほうがウエッジよりもうまく打てて、ピンに寄りましたね。アマチュアには「ゴールドエイト」や「ゴールドナイン」のほうがよいかもしれません。ピンチにミスなく打てる打ち方ですからね。自分が安心できる打ち方を選択すればよいと思います。
──ありがとうございます。そうさせていただきます。でも、本日習った基本はじっくり練習して、どんな距離でもうまく打て、ピンに寄せられるようにしたいです。実戦に使えるまで頑張ります。
(文:本條強、協力:越生ゴルフクラブ)