韓国、100品目で脱日本依存目標に 支援に6800億円
優遇除外受け対策 半導体材料など年内にも
【ソウル=鈴木壮太郎】韓国政府は5日、主要な部品・素材の国産化へ向け研究開発投資に7年間で7兆8000億ウォン(約6800億円)をあてると発表した。日本政府が輸出優遇国から韓国を除外したことへの対応策で100品目を戦略品目に指定した。このうち日本が輸出管理を厳格化した半導体材料3品目を含む20品目は1年以内に「脱日本依存」を達成するという。ただ、部品・素材開発は長期の研究期間が必要で実現するかは不透明だ。
産業通商資源省が同日発表した「素材・部品・装備競争力強化対策」によると、半導体、ディスプレー、自動車、電機・電子、機械・金属、基礎化学の6大分野から100品目を戦略品目に指定した。
このうち、日本企業がシェア7~9割を握るフッ化水素、高純度フッ化水素、レジスト(感光材)、フッ化ポリイミドなど20品目については1年以内の「供給安定化」をめざす。残る80品目についても、5年以内に達成する。ただ、具体的な品目名については「公開する利益がない」(同省)として明らかにしていない。
「供給安定化」とは日本以外から調達することを意味し、他国からの輸入拡大や国産化を進める。韓国政府は企業の研究開発支援に7年間で7兆8000億ウォンを投じる。サムスン電子など大手の需要家と国内の部品メーカーの共同開発を促し、国産化率を引き上げる。通関の24時間運用などによる手続き迅速化、税率引き下げなどで企業に行動を促す。
産業界からは韓国政府の対策に懐疑的な見方もある。電機業界の関係者は「政府の目標値だと受け止めている。現実性があるかはわからない」と打ち明ける。
日韓には日本が部品・素材を韓国に供給し、韓国が完成品にして世界に販売するという分業体制が確立している。韓国の対日貿易赤字が2018年に240億ドル(約2兆5400億円)と国別で最大なのは、こうした産業構造のためだ。19年1~6月も対日赤字が電子部品で20億ドルを超えた。
構造を変えるにはコストや時間がかかり、あえて崩したくはないというのが企業の本音だ。それでも、同関係者は「調達に不確実性が高まったのは事実で、代替案を検討せざるを得ないのは事実だ」と語った。
韓国経済に詳しい日本総研の向山英彦・上席主任研究員は「韓国は素材や部品の日本依存を課題とし、2000年代から国産化を進めてきた」と指摘する。今回、韓国政府はこうした流れを加速させる方針を明確にしたもので、「すでに汎用化しているものは1~2年以内に国産化を達成できるとみられるが、高度な技術を伴うコアな素材・部品の代替は難しい」との見方を示す。